唇が重なり、強引に舌をねじ込まれる。
滝島さんからは自分から動かせと指導されたが、なにもせずにじっとしていた。
なにも、なにも感じない。
ううん、むしろ感じるのは……嫌悪。

「……お前はオレのものだ」

「私はあなたのものじゃない」

力いっぱい、ぐいっと唇を拭う。
押しのければ、限界にきていた彼の身体はいとも簡単に転がった。

「今日は帰って。
わかった?」

「……」

返事のない彼を無視してタクシーを呼ぶ。
蹲ったまま動かない彼は放置で、つい先日、滝島さんが差し入れしてくれたものの残りと簡単に食べられそうなものを袋に詰めた。
間もなくしてタクシーが到着を告げ、袋と一緒に英人を押し込む。

「これ。
インフルだったら外に出られないから、よかったら食べて。
……運転手さん、これでこの人を家まで。
おつりはけっこうです」