「うーっ、さみー。
これってもしかしてインフルエンザ?
お前のがうつったんじゃねーの。
なら、なおさら看病しなきゃだろ」

相手は病人だってわかっている。
けれど私は妙に醒めた目で彼を見ていた。

「タクシー呼んであげるから帰りなよ。
それで明日になったら病院行って」

「なんで帰らなきゃいけねーんだよ。
お前がここで看病してくれればいいだろ」

傲慢。
わがまま。
自分勝手。
こんな男にこれ以上、振り回されたくない。

「私、週明けに大事なプレゼンが控えてるの。
だから、あなたにかまっている暇はない。
タクシー呼んであげるから帰って」

「茉理乃!」

病人らしからぬ力でベッドに押し倒された。
怒りの炎が燃える瞳で私を見る彼を、ただただなんの感情もなく見上げていた。

「……!」