「そうですね、ちょっと出ただけで冷えちゃいました」

グラスが空なことに気づき、次を頼むか悩んだ。

「そういや、病み上がりなのにこんなところに連れてきて悪かったな。
そろそろ出るか」

「いえ、待っててくれたのは……嬉しかったので」

「そうか」

くいっと、滝島さんが眼鏡を上げる。
でも、ちょうどキリもいいし、もう飲む気分にはなれそうにない。
同意して席を立つ。

「今日はごちそうさまでした」

「ごちそうさまって割り勘だっただろ」

通りにふたり並び、タクシーがくるのを待った。

「でも、滝島さんの方が……」

「俺の方がたくさん飲んで食ってるんだから当たり前」

「いたっ」