「また連絡する。
熱が下がったからって無理せずにちゃんと寝とけよ」

「……はい」

離れた、彼の匂いが、体温が名残惜しい。

「おやすみ」

去り際、滝島さんがマスク越しに唇を――重ねた。

「……!」

パタン、とドアが閉まった瞬間、腰が抜けたかのようにその場に座り込む。
なんで、あんなこと。
キスなんてベッドの中でしかしたことがないのに。

ふらふらと部屋に戻り、ベッドに潜り込む。
また熱が上がってきたかのように身体が熱い。
いや、もうこんなウブな反応する年じゃないとわかっている。
けれど、あの滝島さんの顔は。

何度か深呼吸を繰り返し、冷静になった。

「そういえば」

なんで私は、滝島さんに助けを求めたのだろう。
誰でもよかったはずなのだ。