「いえ……」

どうしてか、顔が笑ってしまう。
胸の奥がぽっと温かい。

「じゃあ、もう明日は来ねーけど、なんかあったらすぐ連絡しろ?」

「はい」

滝島さんはいいと言ったが、玄関までお見送りした。

「少しでも元気そうになってよかった」

「えっ!?」

いきなり、彼から抱き締められた。
お風呂に入れなくてもう三日目なのだ、臭くないか気になって慌てた。

「早く元気になれよ」

「……はい」

……でも。
滝島さんからはいい匂いがする。
微かに香るラストノートの匂いと、少しの体臭が混ざった香り。
いつまでもこの匂いに包まれていたい、それは私にそう思わせた。