「あの、でも」

「お前が食ったら帰るから心配するな」

ぼーっと彼がうちのキッチンで料理するのを見ていた。
なんかずっと、見ていたい。
そんなことを考えている自分に気づき、ボッと顔が火を噴いた。

「できたぞー。
ん?
顔が赤いけど、熱下がってなかったか?」

心配そうにまた、手を額につけてくる。
それでさらに身体の熱が上がった。

「やっぱ熱下がってないな。
食ったら寝ろ」

「……そうします」

消え入りそうな声でそれだけ言い、箸を取る。
野菜のたっぷり入ったうどんは優しく身体に沁みた。

「……美味しい、です」

「そうか」

滝島さんは眼鏡の下で目を細め、私をずっと見ている。
なんだか恥ずかしくて、うどんだけを見つめたままちまちまと食べ進めた。