「……いま、熱があっ、て。
もしかしたら、インフルエンザかもしれない、し」

「うわっ、最悪!
帰る!」

来たときと一緒で唐突に英人は帰っていった。
いなくなってようやく、ベッドに戻る。

「……最悪って、私の方が、最悪、だよ……」

滝島さんはうつるかもしれないのに看病しようとしていてくれた。
誰かさんとは大違いだ。

でも具合が悪くても英人の要求に応えるのはいままでの私だったら、当たり前だった。
滝島さんと知り合って、当たり前がどんどん当たり前じゃなくなっていく。
これっていいこと?
悪いこと?

翌朝になっても熱は下がっていなかった。
むしろ少し、上がった。

「これは完璧にインフルだろうな……」

マスクの重装備できた滝島さんは、今日も私を病院へ連れていってくれた。
結果は見事に陽性。
これで薬がもらえるから、よかったといえばよかったような。