「……財布の、中、です」

「勝手にバッグ開けるぞ」

バッグの中から財布を取りだし、滝島さんは私を抱え上げた。

「タクシー待たせてある。
病院、行くぞ」

なにも言う気になれず、ただ頷くだけして彼に身体を預けた。

病院では時期的にインフルエンザの検査をしたが、陰性だった。
がしかしまだ熱が出てからさほどたっていないので、また明日受けた方がいいと言われたが。

「食欲はあるか」

私に冷却シートを貼り滝島さんは訊いてくるけれど、もしインフルエンザでうつしたりしたら大変なことになるのだ。

「たき、しま、さん。
大丈夫、だから。
帰って、くだ、さい」

「馬鹿、気にするな。
マスクもしているし、予防接種も受けてる」

そういう問題じゃないと思うが、反論するほど元気はない。