戸辺さんがふて腐れてみせ、返す言葉がない。

「う、疑って、スミマセンでした……」

「素直でよろしい。
これからもごひいきにー」

ひらひらと手を振りながら戸辺さんは会議室を出ていった。
戸辺さんには入社以来お世話になりっぱなしだし、しかもあの神絵師の青狼さんに頼まれたんだ、もう仕方ないと思う……。

その後、戸辺さんはあと少ししかないここにいる間に、できるだけ私が自由にできるように上役に働きかけて便宜を図るって約束してくれた。
そのおかげで形式上は自由に呟かせてもらっている。
……まあ、一言呟くにしても大石課長の承認が必要だけど。



昼休みになりみんながランチに出ていく中、私はまだパソコンのキーを叩いていた。

「なんだ、昼メシ行かないのか。
あ、ダイエットか、すまん、すまん。
いまさらやったって遅いとは思うけどな」

自分こそダイエットが必要なんじゃないかってお腹を揺すって笑う大石課長は無視して仕事を続ける。
でも彼は私が聞いていないなんて気づかずに話し続けた。