写真は2年前の春。
この家の庭先で撮影した祖母との最後の写真となってしまった。

祖母との想い出は山ほどある。

小さい頃から何度も何度もこの町に来てはこの家に泊まり、海や川や山でたくさん遊んだ記憶が蘇る。

ちょっと塩辛いおにぎりや山菜尽くしの茶色い食卓や、絶妙な味加減の煮物や味噌汁。甘さの秘訣ははちみつの厚焼き玉子。

「おばあちゃん・・・」

私は胸元にそっと手を這わせた。すれば、少しひんやりとした感触が指先に触れる。

指でつまみ上げ、視界に入れると糸で縁取りを編まれた赤い石のペンダントがぶら下がっている。太陽をそのまま閉じ込めたようなキラキラと光が輝く神秘的な石だ。

大きさは人差し指にコロンと乗るほどのサイズ。宝石のようにカッティングがされた石でもないし、ダイヤモンドやエメラルド、ルビーのような透明感と華やかさはない。

ただ、吸い込まれ、燃え上がるように美しい金と緋色の色合いが複雑に絡み合い、角度によって焔が内側から燃え上がるような光を放つ。

祖母の形見であり、私の大切な宝物。小さな頃、譲り受けたお守りのような大切なペンダントだ。

『女の子が生まれたらな。ななの誕生日に昔から代々譲ってきたんで』

一体どれ程の時を経てきたのだろう。

祖母がペンダントをくれるとき、このペンダントは祖母の父から。父の代には女子が生まれなかったので、その父から娘が生まれたら、と教えられた。

思えば私が今の仕事をしているのも、この石がきっかけだったのかもしれない。

祖母が物心付いた頃「七になったらお前にやる」と教えながら、そっと引き出しに入れられていた小箱から見せてくれた記憶がくっきりと蘇る。

あれは何て言う宝石だろう。
どんなお姫様が身に付けていたのだろう。

そう思えば思うほど、その石に魅了され、その石をきっかけとして鉱物に俄然と興味が湧いた。河原で取れる水晶の欠片や山奥の清流の中に時々落ち着いてる紫水晶が、ますますにその興味をくすぐった。

小学校に上がり、七五三の折りにどうやら祖母から下されたペンダントをさらに皮切りに、ますますのめり込んでいくようになる。

中学、高校、そして大学。

大学は鉱物の研究ができる研究室に所属し、国内鉱物の産地と分布について調べた。