今より遙か遠い、遠い昔。
 
 久遠のような時を遡ると、確かにその時代は在った。
 
 大きな世界のうねりに呑み込まれ、栄華と衰退に踊らされ、『時代』と呼ぶには余りに短く儚かった、和と洋が混在した淡い淡い時間が。
 
 年号にして、大正9年。そこは正に陰と陽が織りなす帝都。
 
 これは今や完全に分かれてしまった怪異と人、その分岐点の物語。

 今から100年前の、物語。