すると相手は沈黙に耐えかねた様子で……口を開いた。

「僕は3年4組の尾方玲司(オガタレイジ)よろしく」

 オガタ レイジ先輩か……あたしも名前は覚えて貰いたいので、自己紹介だけはしておこうかな?。

「あ……あたしは2年3組の、水口亜優です」

 でも……それ以上、何も言えなかった。名前を言うのが精一杯で……その後は職員室まで、お互いに無言だった。

オガタ先輩は職員室のドアを開けてくれた。

「両手が塞がったままだと、水口さんがドアを開けられないと思ったから」

「ありがとうございます。オガタ先輩って、優しいんですね」

「困ってる人が助ける。当然のことをしただけだよ」

 両手が塞がっている状態が大変そうだから、わざわざ付いて来てくれたの?

 オガタ先輩って優しいな……先輩のこともっと知りたいな……自然とそういう気持ちになった。

 さっきから心臓がバクバクしてる、もしかして……これって……ひとめ惚れ?男の人にこんなにドキドキするなんて初めてだ。

 教室に戻り、すぐに名簿でオガタ先輩の漢字を確認した。三年四組のページを、真っ先に開いた。

 オガタ先輩の名前は一番上にあった。

『尾方玲司』こんな字なんだと、一人で名簿を見てニヤニヤしてしまった。

 尾方先輩って……彼女がいるのかな?先輩のことが、色々と気になり始めた。

 先輩と別れてから、かなり時間が経つのに……あたしの心臓は、まだドキドキが止まらない!!こんな経験、生まれて初めてだ……これが恋なのかな?