海翔先輩は話を続けた。

「どんな夢を見たかは知らねぇけど、俺が亜優のこと、置いて行くわけねぇーだろう。それに最近は亜優が俺を避けてるじゃねぇかよ」

「それは……中間テストの結果が悲惨だったから、期末テストで挽回したくて勉強してたんです」

「そっか気付いてやれなくてゴメンな。弁当とか無理させてたんだな。期末テストが終わるまでは弁当は作らなくていいから」

「それは違うんです」

「何が?」

「最近、よく変な夢を見るんです」

 あたしは寝言の真相を海翔先輩に話した。

「そっかぁ。幼い頃の記憶がないのか?夢を見たからって、無理に思い出す必用はねぇよ。楽しい思い出とは限らないんだから」

 海翔先輩の今の言葉は、凄く気持ちが楽になった。だけど海翔先輩に夢中になって勉強が手付かずになった事は言えなかった。それは告白と同じだから

 告白は期末テストが終わるまではしない。今はテストに集中するって決めたから。

 今日、海翔先輩と話たことで……頑張って50番以内に返り咲くという決意はより高まった。

 オレンジ色に染まる教室で海翔先輩と二人きり。あたしの胸は高鳴るばかりで顏が紅潮していく。


「亜優、可愛い。真っ赤になちゃってさ……」

 あたしはちょっと幼稚かもしれないけど、言い訳をした。

「それは夕日のせいです」

「夕日のせいね。そういうことにして置いてやるよ。期末テスト頑張れよ」

「はい、海翔先輩も」

「あぁ……1回くらいアイツに勝ちてぇしな」

「それって尾方先輩に勝ちたいってことですか?」

「そうだ成績だけは何故かアイツには1回も勝てないんだよな」

「じゃあ、おまじない」

 あたしは海翔先輩に手作りの赤いミサンガをプレゼントした。