それに……海翔先輩からも好きって言葉は、直接はまだ一度も言われたことがない。
『俺の女になれ、お前に拒否権なんかない』そう言われた時……始めは最低な人だと思った。
だけど……今はこんなにも好き。だから期末テストは頑張ろう。そして自分の気持ちを伝えよう。
今までは必ず50番以内に入っていた。だから期末テストで50番以内に返り咲くことが出来たら告白する決意をした。
あたしは翔先輩と一緒に帰りたい気持ちを我慢した。
そして放課後は分からないことを先生に質問しに行くようにした。一緒に帰るのは我慢したけど手作りお弁当だけは毎日続けている。
それだけが今は楽しみだし、息抜きになっている。期末テストが終わるまでの辛抱だ。
恋に溺れてしまった……恋愛という名の麻酔にかかった自分へのペナルティーを課した。期末テストまであとわずか。絶対に50番以内に返り咲くという決意でテストに挑むだけ。
放課後は図書室でテスト勉強をしている。今日は陽射しが暖かくて気持ち良くなって、いつの間にか居眠りをしてしまっていたみたい。
「おい、亜優。起きろ」
海翔先輩の声がした。
「あたし、もしかして……寝てたの?」
「その通りだ。亜優さ寝言で海翔……あたしを置いて行かないで……って言ってたぞ」
う……嘘。
「夢の中では俺のことを呼び捨てにしてんだな。これからは、海翔って呼んでくれると嬉しいな」
いや、それは違うんですけど――と言うより……自分の寝言は分かんないし。
「違うんです」
「海翔って呼んで見ろよ」
海翔先輩は話を聞く気はないみたいだから、あたしは夢の話をするのを諦めた。