尾方先輩と一緒に海翔先輩の元へ行くと案の定……海翔先輩は、尾方先輩に怒りをぶつけた。
「なんでお前が亜優と一緒に来るんだよ」
「悪い……俺が前方不注意だったせいで、海翔への差し入れを台無しにしてしまったんだ」
「かなりグチャグチャになってしまって……」
海翔先輩は見た目は気にしないと言って、勢い良く食べ始め私も尾形先輩も唖然とした。
「亜優、来週は何のお菓子を作る予定なんだ?」
いつになく優しい言葉に不気味さを感じたけど、あたしは……海翔先輩の質問に答えた。
「来週はクッキーの予定ですけど――」
「来週はぐちゃぐちゃになる心配はないな。ぐちゃぐちゃになっても、このタルトは上手いから気にするな。それから早く俺に会いたいからって廊下を走るんじゃないぞ」
あたしの頭を撫でながら、海翔先輩はそう言った瞬間だった。また懐かしい感じを受けた。
その夜あたしは何故か分からないけど、変な夢を見た。
『カイト待ってよ、あたしを置いて行かないで……』
泣きながらそう叫んでいる幼い自分の姿だった。夢のせいで、あたしはいつもより早く目覚めた。
そしてこの間の生徒会室での海翔先輩と副会長の会話が頭によぎった。海翔先輩とあたしは幼馴染みだって話が……。
あたしは授業中も海翔先輩のことばかり考えてしまい、今日は授業の内容が全く頭に入って来なかった。
そんな日々は続くと……中間テストの結果は最悪だった。赤点こそ無かったけど、かなりギリギリ再試を免れた。
恋に溺れた……あたしが悪いんだけど。このままだと……勉強が出来なくなりそう。
勉強が手についてないから、こんな結果になったんだけど……。テストの結果は、絶対……海翔先輩には言えない。嫌われそうで、怖いから。
このままじゃ成績は下がる一方だ。それに……まだ自分の気持ちを海翔先輩に伝えてない。