今日も何もないまま、一日が終わろうとしていた。あたしは日直だったから放課後に、数学の課題を職員室に運ぶことになっていた。

 前が見えないほど、紙が山積みにされ、それ抱えて職員室へと向かった。こんな日に、日直なんて……ホントついてないなと思った。

 それと同時に、量に課題出した数学教師を恨んでやった。職員室に向かう途中も、プリントを落とさないようにと、かなり慎重になって歩いていた。

 ――もう少しで職員室だ。そう思った時だった。

 気をつけていたはずなのに……少しだけ、プリントを落としてしまったので拾わないと……そう思った時だったら。床に誰かの手が伸び、そして拾ってくれた。

「小さな女の子が、こんなに山積みで運ぶの大変だよね。半分持ってあげるよ」

「ありがとうございます。優しいんですね」

 あたしは拾ってくれた上に優しい言葉を掛けてくれた男の人の顔を見た瞬間……ドキッとした。

 もしかして……これは一目惚れ?職員室に向かって歩いていると、心臓がバクバクして鼓動がいつもより大きくなっていくのを感じている。

 こんな経験……初めてだ。心臓がバクバクして、何も言葉が出て来なかった。