海翔先輩を好きだと自覚してからは……自分から海翔先輩に会いに行くようにもなった。頭の中はいつの間にか……海翔先輩のことでイッパイになっていた。他のことなんて全く頭に入っと来ないくらい。

 今日は調理部で週一のお菓子作りの日。海翔先輩は甘いものが苦手だって言ってたけど……あたしが作ったものなら、何でも食べるって言ってたから、海翔先輩に差し入れすることにした。

 今日は昨日までの話し合いの結果、イチゴタルトを作ることに決まった。見た目の完成度は意外と高ったので、おもわず携帯を手にして写メを撮った。

 海翔先輩の分として、小さく作ったタルトを箱に入れて生徒会室へ向かった。

 海翔先輩……喜んでくれるかな?あたしはそれだけが不安だった。生徒会室に運んでいる途中で、人とぶつかってタルトの箱を落としてしまった。

「ごめんなさい」

 あたしはぶつかった男の人に謝った。

「僕のほうこそ、ごめんなさい。前方不注意だった」

 ぶつかった相手はなんと尾方先輩だった。あたしは急いで箱の中身を確認した。案の定……中身はグチャグチャになっていた。

「水口さんゴメンね。これ、海翔への差し入れなんでしょ」

「はい……どうしよう」

「僕も一緒に行って海翔に謝るよ」

「なんか余計に怒りそうな気がするんですけど…」

「言えてるかも。だけど、こんなにグチャグチャになったら、僕が責任を持って食べようと思うけど……。それに僕が海翔に謝りたいんだよね」

「分かりました」

 あたしは尾方先輩と一緒に海翔先輩の元へ急いだ。