海翔先輩に誘導されあたしは、先に中に入ると海翔先輩はすぐに鍵をかけた。海翔先輩と向かい合わせに座りお弁当を広げた。

「その弁当は自分で作ったのか?」

「はい……自分で作りましたけど」

「それじゃあ、俺の弁当とトレードしてくれ」

 そう言って海翔先輩は、あたしのお弁当を横取りし、自分が持っていたパンを差し出してきた。ちょっと、いくらなんでも一方的過ぎる。

 しょうがないからパンで我慢するしかないか……海翔先輩は、あたしのお弁当を食べ始めた。

「美味しいよ、亜優」

 お弁当を横取りされて機嫌が悪かったのに、『美味しい』のたった一言で機嫌が直ってしまった。

「ありがとうございます」

「亜優は料理上手なんだな」

 そう言って海翔先輩は黙々と食べ進めた。『美味しい』って言って貰えるとやっぱり嬉しい……もしかして、あたしって……すごい単純な性格?

「美味かったぜ」

「明日から海翔先輩の分も作って来ましょうか?」

「マジ?それ本気で言ってんの」

「うんだって……美味しそうに食べてる、海翔先輩の姿を見てたら嬉しかったから」

「ありがとう、亜優」

 本当はまた横取りされてパンを食べることになるのが嫌だし、1人分も2人分も変わらないって思ったからである。海翔先輩は嬉しそうに、後ろからあたしに抱きついてきた。

「もう……何するんですか」

 口では嫌そうに言ったけど、気持ちは裏腹で不思議と嫌じゃなかった。