確かに……海翔先輩が女子に告白されたって話は良く耳にするけど、告白したって話は聞いたことがない。

「亜優には海翔先輩みたいな強引な人の方が合ってると思うけど」

「花帆は面白がってるでしょう」

「そんなことないよ……。亜優が幸せになれば良いって思ってるだけだから。それに亜優は絶対に海翔先輩に惚れると思ってるから」

「ちょっと……待ってよ」

「亜優の理想の男性は玲司先輩かも知れないよ。でも案外、理想と現実は違うんだよ。私も、そうだったから」

「さっきね、海翔先輩にも同じこと言われた」

「たぶん……海翔先輩も実体験があるんじゃない?。それに亜優が玲司先輩に対して抱いた感情は“恋”じゃなく“憧れ”なんじゃないの?恋と憧れは別物だよ」

 理想と現実が違うって話はよく耳にする話だけど……。恋と憧れの違いって何だろう?

 あたしには分からない。でも……さっき海翔先輩に感じた、懐かしさは何だったんだろう?。それが無性に気になる。

 はじめて見るはずの海翔先輩の笑顔が、何故か妙に懐かしく感じた。

 昼休みになり、あたしは、花帆と一緒にお弁当を食べようとした時だった。『亜優、一緒に昼飯食いに行くぞ』と言う声が聞こえてきた。

 この声の主はすぐに分かった。もちろん、海翔先輩だった。

「お昼を一緒に食べる約束はしてませんよね」

「俺が一緒に食いたいんだよ。そういう訳だから、亜優は借りていくね」

 海翔先輩は花帆にそう言った。

「どうぞ……海翔先輩とゆっくりしてきてね、亜優」

「ありがとう。じゃあ行くぞ亜優」

 海翔先輩に連れて来られた場所は【生徒会室】だった。