海翔先輩はあたしの話を軽く鼻で笑った。

「要するに亜優は玲司みたいな男が理想のタイプなんだろう?」

「そうですよ」

「理想と現実は違うぞ。だからさ……亜優は何も気にせずに俺と付き合えばいいんだよ」

「海翔先輩の言ってること分かんないんですけど」

「簡単に言うと恋愛は理想とは、反対のタイプに惹かれることが多いんだよ。だからあんな奴は辞めて俺にしろって言ってんの」

「どうせ嫌だって言っても、あたしに拒否権はないって言うんでしょ」

「流石に分かってるねぇ」

「分かりました。あたし……海翔先輩と付き合います」

 あたしは玲司先輩への想いを封印して、本当は嫌だけど、海翔先輩の強引さに負けて親衛隊の一員になる決意をした。

「教室まで送る。そろそろHRの時間だしな」

「は……はい」

「じゃあ行くか」

 海翔先輩は優しく……あたしの手を取り、屋上を後にした。

 海翔先輩と手を繋いだら、何故か分からないけど……『ドキドキ』した。上手く言えないけど、すごく懐かしい……そんな感じがした。

 それに……海翔先輩の手の感触が、何故か始めてじゃない感じだった。

 教室に向かう途中で海翔先輩は多くの女子から、挨拶程度の声を掛けられ嬉しそうに手を振っていた。

 あたしは自分の存在を無視された感覚に陥り、何故か分からないけど凄くイライラした。 教室へ戻ると花帆から誘導尋問された。

「亜優、海翔先輩と屋上で何を話してたのよ!?」

 花帆はあたしの肩を人差し指で“ツンツン”しながら聞いてきた。

「昨日のことだよ。玲司先輩に告白するのは諦めることにした」

「それじゃあ……海翔先輩と付き合うことにしたんだ」

「うん……だってあたしに拒否権はないって言うし……。だから諦めて親衛隊の一員になることにしたよ」

「それは違うと思うよ。海翔先輩亜優のことは本気だよ。だって、海翔先輩から女の子に告白したことは一度もないんだよ」

 えっ、そうなんだ意外だな。