この人は、一体……何をしたいんだろう?何が目的なんだろう。

「亜優……今、キスされるんじゃないかって思っただろう。顔赤いぞ。ドキッとしたんじゃねぇの~?」

「そっ、そ……そんな事ないです」

「動揺したってことは、図星だったみたいだな。心配しなくても何もしねぇよ。亜優が俺を好きになってくれるまでは……」

海翔先輩は、噂通りの軽くて・強引で意地悪な人だと思った。ひとことで言うと『俺様キャラ』

 確かに顔は玲司先輩より海翔先輩の方が、カッコいいと思うけど……あたしの好きなタイプは玲司先輩。

 海翔先輩は何であたしなんかを彼女に選んだんだろう?。それに……あたしのことも、その他大勢の女のと一緒なんでしょ。

 あたしは絶対に海翔先輩を好きにならない。改めてそう思った。

 さっきのは不意を突かれただけ。だから好きでもない海翔先輩に『ドキッ』としただけ……絶対にそうに違いない。

「明日からは先に来るなよ。分かったな」

「ハイハイ」

 あたしは明らかに嫌だと分かる様な態度で、海翔先輩に返事をした。だって……玲司先輩がテニス部の朝練に参加していたから。

 あたしは玲司先輩に見とれてため、ちゃんと海翔先輩の話を聞いていなかった。

 あたしが適当な返事をしたからか、海翔先輩は怒りをあらわにした。

「亜優、ちゃんと俺の話し聞いてたか」

 あたしはそれでも玲司先輩を見つめていた。

「もしかして……亜優の片想いの相手って玲司なのか?」

 嘘!?、何で分かったの?。海翔先輩に見抜かれて、あたしは何も言葉が出て来なかった。

「その様子だと図星のようだな」

「その通りですよ」

 あたしは素直に自分の気持ちを認めた。

「あんな堅物なんか辞めて俺だけを見てればいいんだよ」

「玲司先輩、優しくて凄くいい人です。あたしは海翔先輩みたいに軽薄な人は大嫌いなんです」

思ったままを海翔先輩にぶつけた。