唖然とする母を家に残し、僕は全速力で駅へ走った。
幸か不幸か、日々犯人を走って追いかける仕事柄、スタミナはあるし足もそこそこ速くなったような気がする。
地下鉄に走りこむと、スマホで新新線の時間を確認しチケットを予約した。奇跡的に軽井沢に止まる新幹線がすぐに見つかった。
地下鉄が上野の駅に止まると同時に、僕は電車を走り降りる。
無賃乗車でもなく、警察特権を使っているわけではないので、順番を待ってICカードで改札口を出ると、JRの券売機にダッシュした。そして、飛び込むようにタッチパネルに触れ、財布から取り出したクレジットカードを挿入し発券する。
とりあえず乗車券と特急券さえあれば、あとは乗ってからどうにでもなる。
チケットが発券されるのももどかしく、ひったくるようにして機械からチケットを奪うと、再びダッシュで改札口を通る。発車時刻に間に合わなければ、新幹線は無情にも切符を持っている客も置いて発車する。
エスカレーターを駆け上がり、ドアーの閉まりかけた新幹線に飛び乗った。
両足が車両の床に着いた途端、背後でドアーが閉まった。
自由席の混雑を抜けて指定席に移動する。そして、とりあえず空いている席に腰を下ろした。そして、スマホを取り出し、紗綾樺さんにメールする。到着時刻は三時二十二分。走って向かえば、紗綾樺さんのいるアウトレットまで十分はかからない。
『三時半までには着きます』
メールを読んでくれることを信じて送る。
『はくたか』と違い、『あさま』は各駅停車だ。大宮、熊谷、本庄早稲田、高崎、安中榛名と停車する。とにかく、軽井沢についてくれればそれでいい。祈っていると自動扉が開き、車掌が姿を現す。
「乗車券を拝見いたします」
丁寧に言う車掌に僕はチケットを手渡すと、指定券を買っていないことを説明し、軽井沢までだと告げた。車掌は手元の端末を操作し、軽井沢まで空いている席を確認し、指定券を発行してくれた。
僕は差額を支払い、指定された席に移動した。
☆☆☆
芝生に覆われた緩い斜面をくだると、段々に人の声と考えが聞こえてくる。日本語以外も聞こえてくる。
女の子が男の子にブランド品をねだろうとする考え、女性のグループがセール品の値踏みをしている考え、恋人へのプレゼントを探す男性や女性の考え、いろいろな考えが聞こえてくる。
色々な考えが頭の中を巡り、私はふと尚生さんに何かプレゼントしたら喜んでもらえるのでは、お兄ちゃんにプレゼントしたら喜んでくれるのではという考えが頭に浮かんだ。でも、何をプレゼントしたら喜ばれるのか私にはわからない。
尚生さんに相談したら、きっとお兄ちゃんのプレゼントを選ぶのを助けてくれる。でも、そうしたら、尚生さんのプレゼントは?
私は考えながら、ゆっくりと歩を進めて大きなアウトレットをゆっくりと通り抜ける。洋服、靴、バッグにキッチンウェア、色々なお店が並んでいて、沢山の人で混んでいるお店と、人があまり入っていないお店がある。どうやら、値段が高すぎると人が入らないのは、アウトレットでも、デパートでも同じようだ。
紳士物を扱っている店の前で何度か足を止めるが、店の中に入る決心がつかず、ガラス越しに眺めるだけにする。
ゆっくりと歩を進め、女性ものの店は素通りにする。
駅にだいぶ近づいたころ、スマホの着信音が聞こえた。
☆☆☆
幸か不幸か、日々犯人を走って追いかける仕事柄、スタミナはあるし足もそこそこ速くなったような気がする。
地下鉄に走りこむと、スマホで新新線の時間を確認しチケットを予約した。奇跡的に軽井沢に止まる新幹線がすぐに見つかった。
地下鉄が上野の駅に止まると同時に、僕は電車を走り降りる。
無賃乗車でもなく、警察特権を使っているわけではないので、順番を待ってICカードで改札口を出ると、JRの券売機にダッシュした。そして、飛び込むようにタッチパネルに触れ、財布から取り出したクレジットカードを挿入し発券する。
とりあえず乗車券と特急券さえあれば、あとは乗ってからどうにでもなる。
チケットが発券されるのももどかしく、ひったくるようにして機械からチケットを奪うと、再びダッシュで改札口を通る。発車時刻に間に合わなければ、新幹線は無情にも切符を持っている客も置いて発車する。
エスカレーターを駆け上がり、ドアーの閉まりかけた新幹線に飛び乗った。
両足が車両の床に着いた途端、背後でドアーが閉まった。
自由席の混雑を抜けて指定席に移動する。そして、とりあえず空いている席に腰を下ろした。そして、スマホを取り出し、紗綾樺さんにメールする。到着時刻は三時二十二分。走って向かえば、紗綾樺さんのいるアウトレットまで十分はかからない。
『三時半までには着きます』
メールを読んでくれることを信じて送る。
『はくたか』と違い、『あさま』は各駅停車だ。大宮、熊谷、本庄早稲田、高崎、安中榛名と停車する。とにかく、軽井沢についてくれればそれでいい。祈っていると自動扉が開き、車掌が姿を現す。
「乗車券を拝見いたします」
丁寧に言う車掌に僕はチケットを手渡すと、指定券を買っていないことを説明し、軽井沢までだと告げた。車掌は手元の端末を操作し、軽井沢まで空いている席を確認し、指定券を発行してくれた。
僕は差額を支払い、指定された席に移動した。
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芝生に覆われた緩い斜面をくだると、段々に人の声と考えが聞こえてくる。日本語以外も聞こえてくる。
女の子が男の子にブランド品をねだろうとする考え、女性のグループがセール品の値踏みをしている考え、恋人へのプレゼントを探す男性や女性の考え、いろいろな考えが聞こえてくる。
色々な考えが頭の中を巡り、私はふと尚生さんに何かプレゼントしたら喜んでもらえるのでは、お兄ちゃんにプレゼントしたら喜んでくれるのではという考えが頭に浮かんだ。でも、何をプレゼントしたら喜ばれるのか私にはわからない。
尚生さんに相談したら、きっとお兄ちゃんのプレゼントを選ぶのを助けてくれる。でも、そうしたら、尚生さんのプレゼントは?
私は考えながら、ゆっくりと歩を進めて大きなアウトレットをゆっくりと通り抜ける。洋服、靴、バッグにキッチンウェア、色々なお店が並んでいて、沢山の人で混んでいるお店と、人があまり入っていないお店がある。どうやら、値段が高すぎると人が入らないのは、アウトレットでも、デパートでも同じようだ。
紳士物を扱っている店の前で何度か足を止めるが、店の中に入る決心がつかず、ガラス越しに眺めるだけにする。
ゆっくりと歩を進め、女性ものの店は素通りにする。
駅にだいぶ近づいたころ、スマホの着信音が聞こえた。
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