「それ続けられるの?」

城崎さんの冷たい言葉に樹々は戸惑っていた。
おそらく祝福の言葉が返ってくると思っていたのだろう。

「えっと、多分・・・」

その樹々の曖昧な言葉を城崎さんは見逃さない。

「そんないい加減でいいの?それにその企業、隣町の食品会社でしょ?そこだったら『いい加減な職場』って聞くし、給料悪いし休みもないよ。今年の新入社員、三ヶ月でほとんど辞めたって聞くし」

樹々は混乱したのか、城崎さんから目を反らし再びうつ向く。
そして言葉を失っていた。

一方で城崎さんは続ける。

「あの採用担当の人、ウチのカフェ会で色んな人に声かけているから。そういう人がいる会社だから、あまりいい会社だと思わないけどね。その採用担当の人、常に人手不足を漂わせているし」

現実的な城崎さんの言葉に、樹々は口を開こうとはしなかった。
悔しそうな表情を浮かべている。

そんな樹々を見た橙磨さんは樹々の背中を押す。

「まっ、でも松川さんがいいって思うならいいんじゃない?その人生を歩むのは松川さんだし。僕らがどうこう言っても意味ないし」

城崎さんは頷く。
そしてグラスに入った水と思われる飲み物を口に運ぶ。

「まあそうね。橙磨くんが言う通り、樹々ちゃんがいいって思うならいいんじゃないの?それにその学力じゃどこにも雇ってくれないんじゃないの?内申点もボロボロだと思うし」

「だってそれは杏子さんが!」

「あー、ごめんこめん。全部私達の責任だね。最悪、社長となんとかするから」

イマイチ会話についていけない私は再びアイスレモンティーを一口。

と言うか私、酸っぱいの苦手だった。
アイスレモンティー、もう飲めないかも。