「そういえば松川さんはなんで制服?今日なんかあった?それとも制服デート?」

「えー、樹々ちゃん彼氏いるの?」

橙磨さんの悪ふざけに城崎さんが便乗した。
そのせいで珍しく樹々の表情が赤くなっている。

これは見物だ。

「彼氏なんていませんよ!企業の説明会です」

「あーだから黒髪ね。でもそっちの方が似合ってるじゃんって、言っても無駄か」

やはり城崎さんも私と同意見のようだ。
染めない方が絶対に可愛いのに。

一方で茶髪にこだわりがある樹々は否定するかと思ったけど、樹々は意外な言葉を口にする。

「ですよね。でも杏子さんに会ったらまた染められるし。次はシロさんと同じ金髪にするって言っているし。断ったら丸刈りにされるかもしれないし」

「まあ仕方ないか。あの人に逆らったら首切られるからね」

「ですよね」

樹々と城崎さんは物語の話をしているのかと私は思った。
あまり聞かない単語を聞いてはいけないと、私は彼女達から目を逸らす。

でも直後、話題は私へと移る。

「茜ちゃんは今日何していたの?」

城崎さんに話題を振られて私は少しだけ動揺するが、頑張って言葉を組み立てる。

「えっと、今日は音楽祭で。それで一日」

「うそ?聞きたかったな。こんなに暇だったら私も行けばよかった」

「でもほとんどチビッ子の演奏ですよ。一応、凄いピアニストも来てましたけど」

「でもいいじゃん、生の音楽に触れるだけで。例えばさ、CDやテレビでで聞く音と生の音って違うんでしょ?」

あんまりそんなこと考えたことないが、私なりの言葉を返しておこう。