お店の扉を開けると、参加者の賑やかな声が聞こえてきた。
そして次に聞こえるのは明るい女性の声。

「あら樹々ちゃんいらっしゃーい!そっちは言ってた友達のピアニスト?」

現れたのは綺麗な金髪を揺らす女性の人だった。
笑顔が魅力的な素敵な人。

「シロさんこんちには。こっちがピアノ界のホープこと有名なピアニストです!」

『余計なことを言うな』と店員さんに笑みを見せる樹々を睨みたかったが、今の私にそんな余裕はない。

「え、えっと、よろしくお願いします・・・・。桑原茜です」

私は極度の人見知り。
目の前の綺麗な店員さんと目を合わせることなく、頭の中でパズルのように適切な言葉を探す。

ここまで来る途中に密かに挨拶の練習していたが、やっぱり上手くいかない。

そんな私を見て、目の前の店員さんは小さく笑う。

「茜ちゃんね、よろしくね!私は白町カフェここの店長の城崎美憂(シロサキ ミユウ)シロさんって呼んでくれたらいいから。チケットあるかな?」

「あっ、はい」

ポケットからシワが集まるチケットを取り出して城崎さんに渡す。
シワの理由は、来る途中ずっと握っていたためだ。

「ありがとう!樹々ちゃんも楽しんでね。美空ちゃんと桜ちゃん来てるから!」

「やったー!」

城崎さんは女性らしい可愛い笑みを見せた。

脱色した金髪は、男と間違えるくらい短いショートヘア。
薄いメイクに可愛いらしい顔立ち。

そんな城崎さんを見て、何故だか一瞬だけ樹々と被った。
髪を染めているからだろうか。

「また後で話しかけに行くから楽しんでね!」

そう言った城崎さんは厨房と思われる裏方へと去っていった。

大人数の人が来ているんだから、スタッフとして忙しいんだろう。
来店しているお客さんも多いし。

そのお客さんが大勢いる店内を私は見渡した。