一時は無理かと思った演奏も、無事に終える事が出来た。

それも全て、二人の先生のお陰だ。
二人の支えがなかったら、私はあの舞台に立つことは無かっただろう。

私自身嬉しくないが、私の名前は結構有名らしい。
『世界でも有名なピアニストの教え子だから』と言う理由が一番大きい。

それに私自身も有名なコンクールでも入賞。
だからいつの間にか私の存在は、少年少女の憧れの存在のようになっていたようだ。

実は何度か『ピアニストの桑原茜だ』って知らない人から声を掛けられることもあるし。
そんな私が休憩室で泣いている。
心配した小学生の保護者は春茶先生と栗原先生の元へ行き、事情を話してくれたみたいだ。

多分『側にてあげて欲しい』とか言ってくれたのだろう。

そして私が気が付いた頃には、二人の先生は私の側にいてくれた。
何を言って私を励ましてくれたのかイマイチ覚えてないけど、暖かさはしっかり覚えている。

春茶先生がずっと私の不安な手を握ってくれたから、春茶先生の暖かさは心に残っている。
まるでお母さんのように優しかった。

栗原先生も栗原先生らしい言葉を使って冷めきった私の心を暖めてくれた。
『茜ちゃんに泣き顔は似合わない』とか『早く泣き終わらないと、その泣き顔を写真に納めて部屋に飾る』とか。

『嫌味でしかない最低で大好きな先生』だと改めて思わされる。それと飴玉も貰ったっけ。
相変わらず腹が立つ先生だけど、ずっと私に優しい笑顔を見せてくれたっけ。

何だか元気のない娘を元気付けてくれるお父さんみたい。

そんな二人に励まして貰った私。
いつの間にか笑顔になっている私。

一方で『また誰かに慰めてもらった』と思うと、何だが情けなく思う自分もいる。
一人で生きてきたはずなのに、急に色んな人達に支えられて生きているから、もう何が何だか分からなかった。

でも『これでいいのかな?』って私は考えてしまう。
この前は樹々と橙磨さんに助けて貰ったし。

なんだか最近色々と考えさせられる・・・・。