一時は無理かと思っていた演奏も、春茶先生の前向きな言葉と暖かさに包まれたら、不思議と元気が出た。
春茶先生は緊張する私の手を握って、『大丈夫』と何度も囁いてくれるし。

その言葉のお陰で私の心はやる気に満ちていく。
本当に凄くて面白い先生だと改めて感じた。
舞台では小学生から大学生が数人、三味線や尺八など和楽器を使って演奏をしている。

パンフレットによると、和楽器教室の生徒のようだ。
どこか落ち着く音色や時より見せる躍動感ある演奏に、会場の空気をガラリと変えてしまった。

同時に生徒達は笑顔で演奏をしている、まるで演奏とその和楽器から流れる音を楽しんでいるようだ。

その音をいつの間にか楽しんでいる私に栗原先生が、声を掛けてくれた。

「茜ちゃん、もう大丈夫?」

基本的にこの人に真面目な言葉は似合わない。
だから違和感を感じた私は、いつも通りの言葉を返す。

「心配されなくても大丈夫です。それに栗原先生に心配されたくないし。吐き気がするし」

挑発を兼ねて答えたが、栗原は何故か嬉しそうな笑顔を浮かべている。
この人『変態』なのかな?

そんな変態さんに私は両頬をつねられた。
同時に元気なる言葉をかけてくれる。

「よーし、そのいきだよ!思う存分暴れてきなさい」

「痛い痛い!」

その私と栗原先生とのやり取りを見ていた司会の女性が笑っていた。
何だかちょっとだけ恥ずかしかった。

そしていつの間にか和楽器の演奏が終わる。
演奏者の生徒達は笑顔で一礼すると、会場は今日一番の大きな拍手に包まれた。
改めてスゴイ演奏だったと私も思う。

舞台が暗くなる。そして司会の女性がスポットライトと共に現れた。

・・・・・・。

どうやら私の時間らしい。