正直言って、愛藍の話の内容なんて覚えていない。

かすかに覚えている記憶もどれが本当で、どれが嘘なのかも分からない。
どれが建前で、どれが愛藍の心の声なのかも分からない。

気が付いた頃には出番直前で、次が私の演奏だ。
そして七時間に及ぶ音楽祭の終わりの曲だ。

そのため私は真っ赤な茜色に染まるドレスに着替えて、舞台裏で深呼吸をしていた。
『落ち着け』と自分に言い聞かせる。

そんな私のすぐ側には、春茶先生と栗原先生が支えてくれていた。
春茶先生はずっと私の手を握ってくれている。

・・・・・。