「何だ?葵と仲直りしたのか?ニヤつきやがって。似合わねえな」
似合わないだと?
それは知ってるけど、ちょっと黙ってて!
「うるさい。お兄ちゃんはどっか行って」
「可愛くねぇな」
そう言った兄は私の部屋を見渡す。
タンスとベッドとピアノしかない不細工な私の部屋。
そして兄はピアノに視線が止まって何かを考えるような仕草を見せたけど、私の言葉に兄はいつもの表情に戻る。
「ねぇお兄ちゃん。また私、昔みたいに戻れるよね?」
兄は答える。
「さあな。茜は昔からヘタレだからな。また自分の殻に隠ってしまうんじゃないのか?」
その言葉は兄の本音かどうかは分からない。
ただ私を弄るだけの言葉がも知れない。
でも今の私にはどちらでもいい。
今なら自信もって反論出来る言葉があるのだから。
「そんなことない!もう昔の私じゃないもん。もう迷わないし」
自信を持って言った言葉に兄は満足したのか、私の頭を撫でる。
そして意味深な言葉を口にした。
「よーし、そのいきだ。あと一息がんばれよ!我ら桑原家の将来のためにも。家族で四人でまた過ごせるようによ」
その言葉の本質は分からない。
だから私は思った言葉を兄に問い掛けた。
私には母は居ないし。
「四人?それって・・・・、お兄ちゃん結婚するって意味?」
「さあな」
兄は即答だった。
そして用が済んだのか、兄は私の部屋から出ていく。
しっかり扉を閉めて、兄はリビングに向かった。
また食卓に戻ると、兄は缶ビールを飲み干した。
そんな兄に、父が問い掛ける。
「おう。茜の奴、元気そうじゃないか。昔の友達と仲良くなれたのか?」
「そうみたいだな。まあ、どうでも良いけど」
兄の表情は冷たかった。
いや、そこに表情はなかった。
言葉通り、『どうでもいい』と言うように関心がなかった。
そして兄は立ち上がり、冷蔵庫から新しいビールを持ってくると、その『どうでもいい』の意味を語った。無表情で兄の朱羽は語る。
「正直言って、茜の昔の親友と仲直りとか心の底からどうでもいい。『くだらねえ子供の争い事に巻き込まれやがって』って俺は思う。茜にはやることがあるんだからよ。『くだらねえ事に精尽くしてるんじゃねぇよ』って俺は思う。なんのために春茶先生が現役を引退して茜にピアノ教えてると思ってんだ?」
その兄の言葉を唯一聞いている父は冷静だった。
真剣な眼差しで息子を見つめる。
「まあまあ朱羽。いずれ日は訪れる。それも日は近い。年が明けたら紅も帰ってくるし」
父は好きな日本酒を一口飲むと、晩御飯である鳥の唐揚げを一口つまんだ。
ちなみにその唐揚げは兄や父が作ったものではない。
仕事帰りのスーパーで買った惣菜だ。
忙しい二人の食事は、私が晩御飯を作らない限りはいつもコンビニ弁当かスーパーの惣菜だった。
兄はまた私の事を、父に問い掛ける。
「茜の将来はどうするんだ?やっぱり、母さんと一緒にイタリアに連れてくのか?」
兄の言葉に父は一瞬考えるような表情を見せる。
そして一つ間を置くと父は答えた。
兄同様に真剣な眼差し。
「さあな。それは二人で決めたらいい。俺達が口出しするような事じゃないしな。それに茜は現実を受け止められないだろうし」
「・・・・だな」
『現実を受け止められない』
そう聞いた兄は、小さく笑った。
そして一口ビールを飲むと、父同様に唐揚げを口に運んだ。
『意外とこの唐揚げ旨いな』と言う兄の言葉の直後、話は二人の仕事の話に変わっていった。
二人が話す『私の話』はこれでおしまい。
・・・・。
似合わないだと?
それは知ってるけど、ちょっと黙ってて!
「うるさい。お兄ちゃんはどっか行って」
「可愛くねぇな」
そう言った兄は私の部屋を見渡す。
タンスとベッドとピアノしかない不細工な私の部屋。
そして兄はピアノに視線が止まって何かを考えるような仕草を見せたけど、私の言葉に兄はいつもの表情に戻る。
「ねぇお兄ちゃん。また私、昔みたいに戻れるよね?」
兄は答える。
「さあな。茜は昔からヘタレだからな。また自分の殻に隠ってしまうんじゃないのか?」
その言葉は兄の本音かどうかは分からない。
ただ私を弄るだけの言葉がも知れない。
でも今の私にはどちらでもいい。
今なら自信もって反論出来る言葉があるのだから。
「そんなことない!もう昔の私じゃないもん。もう迷わないし」
自信を持って言った言葉に兄は満足したのか、私の頭を撫でる。
そして意味深な言葉を口にした。
「よーし、そのいきだ。あと一息がんばれよ!我ら桑原家の将来のためにも。家族で四人でまた過ごせるようによ」
その言葉の本質は分からない。
だから私は思った言葉を兄に問い掛けた。
私には母は居ないし。
「四人?それって・・・・、お兄ちゃん結婚するって意味?」
「さあな」
兄は即答だった。
そして用が済んだのか、兄は私の部屋から出ていく。
しっかり扉を閉めて、兄はリビングに向かった。
また食卓に戻ると、兄は缶ビールを飲み干した。
そんな兄に、父が問い掛ける。
「おう。茜の奴、元気そうじゃないか。昔の友達と仲良くなれたのか?」
「そうみたいだな。まあ、どうでも良いけど」
兄の表情は冷たかった。
いや、そこに表情はなかった。
言葉通り、『どうでもいい』と言うように関心がなかった。
そして兄は立ち上がり、冷蔵庫から新しいビールを持ってくると、その『どうでもいい』の意味を語った。無表情で兄の朱羽は語る。
「正直言って、茜の昔の親友と仲直りとか心の底からどうでもいい。『くだらねえ子供の争い事に巻き込まれやがって』って俺は思う。茜にはやることがあるんだからよ。『くだらねえ事に精尽くしてるんじゃねぇよ』って俺は思う。なんのために春茶先生が現役を引退して茜にピアノ教えてると思ってんだ?」
その兄の言葉を唯一聞いている父は冷静だった。
真剣な眼差しで息子を見つめる。
「まあまあ朱羽。いずれ日は訪れる。それも日は近い。年が明けたら紅も帰ってくるし」
父は好きな日本酒を一口飲むと、晩御飯である鳥の唐揚げを一口つまんだ。
ちなみにその唐揚げは兄や父が作ったものではない。
仕事帰りのスーパーで買った惣菜だ。
忙しい二人の食事は、私が晩御飯を作らない限りはいつもコンビニ弁当かスーパーの惣菜だった。
兄はまた私の事を、父に問い掛ける。
「茜の将来はどうするんだ?やっぱり、母さんと一緒にイタリアに連れてくのか?」
兄の言葉に父は一瞬考えるような表情を見せる。
そして一つ間を置くと父は答えた。
兄同様に真剣な眼差し。
「さあな。それは二人で決めたらいい。俺達が口出しするような事じゃないしな。それに茜は現実を受け止められないだろうし」
「・・・・だな」
『現実を受け止められない』
そう聞いた兄は、小さく笑った。
そして一口ビールを飲むと、父同様に唐揚げを口に運んだ。
『意外とこの唐揚げ旨いな』と言う兄の言葉の直後、話は二人の仕事の話に変わっていった。
二人が話す『私の話』はこれでおしまい。
・・・・。