感情。
それは見ていて面白いものだ。

感情だけで人の心も読めるのだから、それはある意味人間の会話の一種だと私は思う。

怒った感情。
喜んだ感情。

悲しい感情。
辛い感情。

暗い感情。
楽しい感情。

他にもまだまだたくさんある。
人の数だけ、感情は無限大に存在する。

その人しか出来ない感情もある。
表情もある。

だから私が昔、人と喋れなかったのは無愛想が原因。
『無愛想』だったから、向こうも声を掛けずらかったのだと思う。

私が何を望んでいるか分からないから、誰も私に声を掛けてこなかったんだろう。

一方の昔の葵は常に笑っていた。
笑っていたから、彼には友達が多かった。

私が話せない人とも、彼は嬉しそうな人とも会話をしていた。
そしてその嬉しそうな葵の笑顔が私は大好きだったし、葵を好きになった女の子は、みんな私と一緒の理由なんだと思う。

葵が笑うから、みんなも笑顔で答える。
それが江島葵という少年だった。

感情豊かな私のヒーローだった。

そんな葵が私に『表情の作り方を教えてほしい』だって?
正直言って、何言っているんだと思った。

そしてそう思ったから、私はいつの間にか笑っていた。
『私と葵の立場、逆じゃん!』って心の中で思いながら私は笑っていた。

お互い、最高の笑顔を見せる。

「帰ろうぜ。みんな待ってるしよ。茜の仲間が待っているんだろ?」

葵の言葉に、私は力強く頷いた。
私は葵から離れて立ち上がると、地面に座る葵に手を差し出した。

葵も私の手を握って起き上がろうとするも、葵の力が強すぎて私は体制を崩す。

何とか葵も立ち上がると、私達は再び笑顔になった。
『お前力弱すぎ』って言う葵に、私は『葵の力が強すぎるの!』と反論した。

多分日頃の運動不足が原因なんだと思うけど・・・・・。