「裏切られた?えっ、なんのこと?」

その言葉は全く理解出来ない私。
そもそも何のことか全く覚えていない。

「は?覚えてないのか?」

「ごめん、なんのこと?」

私は曖昧な表情で首を傾げる。

一方の葵は初めて私に怒った表情を見せた。
喧嘩をしていた時と同じ顔を私に見せたが、葵の表情は落ち着いていく。

小さな息を一つ吐くと、裏切られた出来事を語った。

七年前、応接室から出る時に言った言葉をもう一度言ってくれる。

「あの後『ウサギ小屋で待っている』って言ったのに」

ウサギ小屋で待っている?

・・・・・。

・・・・・・は?

「えっ?いつ?」

「いつって、俺が応接室を出る直前の後のことだよ。その時の俺、笑っただろ?笑って言ったんだよ。『ウサギの死の真相を突き止めるから、ウサギ小屋で待ってる』って言ったんだよ。一応、茜を貶めた言葉も俺の作戦の一つ・・・・。黒沼のことだから、犯人さえ見つかったらそれでよかった。だからこの場から逃げ出すために、俺はまず茜を売った。そうしたら案の定、黒沼は俺を逃してくれた。俺もその時はチャンスだっと思って、最後に俺は茜に『ウサギ小屋で待っている』って言ったんだ。勝手黒沼に売られて、『茜を蹴落としてしまった事』を謝ろうとした。『お前を助けるため』だって、言い訳しようとした。そして後は茜をウサギ小屋でをつだけだったのに、茜は来なかったし・・・・」

・・・・・・・。

・・・なに、それ?

「だから俺、『無視された』かと思ったし。『裏切られた』かと思ったし。まあ、結果的には『俺が裏切った』みたいになったし・・。それと『茜は自分のせいでウサギを殺してしまったって勘違いして、俺達と距離を置いたのか』って俺は思った。だから俺、めっちゃ落ち込んだ。待ち合わせ場所に来てくれなかったから、ただただ茜を蹴落とすような形になってしまったし。俺、茜を助けたくて行動したのに、結果的に茜に自分のやったことを全部押しつけてしまったし。それから愛藍に相談して、お前と疎遠になるのを防ぐためにいじめたって言うのに。その時お前としっかり話し合えば、こんなことにならなかったのに・・・・・」

・・・・・・・・・。

「なに・・・・・それ?」

「えっ、だから・・・・。って茜?」

そして私は葵に向かって、全体重を使って葵を押し倒す。
驚いた葵の上に乗り、葵の頬に涙を落としながら、私は反論する。

そして七年間の怒りをぶつける。
葵や愛藍への怒りじゃなくて、七年間の馬鹿な自分への怒りを、理不尽に葵にぶつける。