ルビコン

「あはは!なんだよそれ!あはは!」

そう言って笑う葵の目には、涙が浮かんでいた。
楽しかった七年前と同じ表情で、彼は笑い続ける。

馬鹿みたいに笑い続けるから、涙が出たのだろう。
昔から葵、笑い続けると涙が出るし。

一方の私はその葵の姿に不安になった。
葵が急に笑うから理解できないし・・・・。

さっきまでの重い雰囲気はどこかに行って、穏やかな空気が流れているから私は理解が出来ない。

だから私は恐る恐る、未だに笑い続ける葵に問い掛ける。
腹を抱えて笑う葵に問い掛ける。

「な、なんで笑う?」

葵は答える。

「だって、面白いんもん。茜の反応見ていたら、何だか楽しいもん」

そう言って葵はまた笑う。
その笑顔がなんだかムカついて、私はまた声を荒げた。

「馬鹿にしてるでしょ!」

「してないしてない!でもやっぱり面白い!」

そう言って、葵は更に大きな声で笑い始めた。
七年前と何一つ変わらない無邪気な表情で彼は笑い続ける。

本当に、あの頃のようにまた笑い続ける・・・・・。

「あ、葵!こら!」

また敵が一人増えたと理解した私は、葵に襲いかかる。
精一杯の体当たりでも食らわせようと葵を押し倒そうとしたけど、樹々の時みたい上手くいかない。

葵にタックルをしたつもりだったけど、何故だか私は葵に抱き締められていた。
暖かい温もりに、私は覆われていた。

って、なんで?

・・・・・なに?

「ちょ、葵!なにさ!」

驚いた私は葵から離れようとする。
だけど相手は男の子。

それも喧嘩の強かった葵だ。
逃げられる訳がない。

そして声が聞こえた。
葵の小さな心の声。

「茜、悪かった。酷いことさせて、ごめんなさい」

その言葉を理解するのに、私は時間がかかった。
時間は掛かったけど、返す言葉はいつもと同じだ。

そこだけは絶対にブレない私。

「だからそれは」

「黙れ。ちょっとは大人しくしてろ」
私の小さな声を書き消すように、葵は大きな声で反論する。

そして、葵は七年の想い語りだした。