でもその時、何故だか昨日の兄の言葉が脳内に再生される。
昨日のお兄ちゃんの励ましの言葉が脳裏に響き渡る。

『自分の考えは間違っていないって、みんなの前で叫んでみろよ。これが私の生き方なんだって、訴えてみろよ。そうすれば、みんな茜の生き方に納得するからさ。そうすれば葵も振り返ってくれるからさ』

そうだ、訴えないと。
これが『桑原茜なんだ!』とアピールしないと。

馬鹿みたいにみっともなく叫ばないと。

「そんなことない!私が悪いもん!だから、謝らないといけないのは私の方。葵に頭を下げなきゃいけないのは私なんだよ!『草でも食べさせたら?』って言わなかったら、こんなことにならなかった。だから、私が悪いの!私が謝るの!」

そう言えば葵が振り返ってくれる。
兄の言葉が本当なら、また葵と仲良くなれる。

「だからその・・・・ごめんなさい」

私はもう一度頭を下げる。
みっともなく叫んだ後は、みっともなく頭を下げる。

そして、みっともなく涙を流してしまった・・・・・・。

常に誰かに弱腰で、謝ることしか能がない私。
それが桑原茜だ。

回りがなんと言おうとも、それが私の生き様だ。

ヘタレで間抜けで、馬鹿で無能な私だ。

社会では何の役に立たないのが今の桑原茜だ。

馬鹿にされても、何を言われても仕方ない。

それが今の私なんだから仕方ない。

自分の立ち位置はものすごく低いんだから、仕方ない。

だから、もう私は負けたくない。
城崎さんも言っていたし、自分の意志を持ち続けたら間違いなく人は変わる。

こんな人間の底辺のような私でも、その『負けない』という意志があるだけで成長出来ると思う。

中身も考え方も、容姿だって変えられるかもしれない。

何より『幸せ』になれるかもしれない。

ってそんなことを考えていたら、突然笑い声が聞こえた。

七年前によく聞いていた笑い声が、目の前から聞こえる。