「だから、最後くらいはみんなを信じてよ。みんなこんなにも茜のことを信じて行動したんだよ。だから、最後くらいは笑ってよ。と言うか笑え。笑わないと無理矢理でも笑わせる」

私はその言葉を聞いていたら、何故だか脇腹辺りに温もりを感じた。
そして急に私にも笑みが溢れて、私は樹々にくすぐられていると理解した。

ってばか!
それだけはやめて!

「ちょ!樹々何するのさ!あはは」

「ばーか。だから言ったの。『茜はあたしには敵わない』ってね、だから、一生あたしの可愛い親友でいろ!ずっとあたしに弄られて、可愛いい声で叫んでいたらいいんだよ!」

その樹々の言葉と共に、いつの間にか立場は逆になっていた。
先程同様に樹々は私に股がり、私をくすぐり続ける。

私が叫んでも、樹々は止めてくれない。
抵抗しても、樹々の力が強くて全く敵わない。

そして『助けて』と他のみんなに視線を送っても、みんなは何故だか私から視線を逸らす。
個人の名前を呼んでも、みんなは助けてくれない。

その姿はまるで、『これは茜がみんなに迷惑をかけた罰だから、我慢しろ』とみんなに言われているような気がした。
意味かわかんないし・・・・・。

まあ少しだけなら理解は出来るけど・・・・。

・・・・・・。

って納得するか!

「『助けて』って言っているんだから、助けてよ!」

不思議だった。
無意識に出た私のその言葉、それがまるで魔法の合言葉のように樹々の手が止まる。

そして樹々は私から離れると、また笑った。

出会ってから何度も私に見せてくれる、若槻樹々の満面の笑顔を彼女は見せてくれる。

「やっぱ言えるじゃん、馬鹿。茜も『助けて』って言えるじゃん、馬鹿」

私から離れた樹々は、私に手を差し出してくれた。
『よく言った』と言うような、慰めるような表情で私は再び起き上がる。

でも馬鹿は余計だ。
また腹が立ってきた!

「馬鹿って何さ。言い過ぎ。私が傷付いているって気付かないの?」

「茜が馬鹿だから仕方ないしゃん。馬鹿に馬鹿言って、何が悪いの?馬鹿を克服してから、その台詞聞かせてくれる?」

まるで仕込んでいたかのような即答の樹々の言葉に、私の怒りは増える一方だ。

『可愛いけど、生意気な樹々の顔を殴ってやろう』かと思ったが、樹々は私の背後に回って私の背中を押す。

怒りに満ちた私を樹々は気にせず、葵のいる方向へ私の体の向きを無理矢理変える。