「ねぇ茜。やっぱり、一人の方がよかったんでしょ?あたしがあの時声を掛けなかったほうが、茜にとって幸せだったんでしょ?」

怒った表情から一転、いつの間にか不安げな表情で話す樹々。

同時にそれが『樹々が今の私を想う言葉』だと理解した私は、すぐに言葉を返した。
樹々が私に言った本音の言葉のように、私も本音を返す。

「そんなことない!樹々のことが大好きだし、再会した紗季や愛藍も大好き。橙磨も小緑も大好き。もちろん葵も大好き。そもそも樹々が高校の入学式で声を掛けてくれなかったら、今の私はなかったと思うし」

自信を持って言った言葉だが、私は違和感を感じた。
『本音を言え』と言われたような気がしたからから私は言ったのに、何故だか『蟻地獄』に嵌まったような不思議な気分。

だって樹々、何故だか私を見て笑っているし。
私をからかう為だけの笑顔を私に見せているし・・・・・。

ってこら!

「そういうくせに、大好きな人を信じないんだよね?茜ってあれ?もしかしてみんなより性格悪い?本当はみんなの気持ちを弄ぶのが大好きな変態性悪女?」

そして私はその樹々の声を聞いて、『樹々の言葉は爆弾だった』と理解する。
同時に『樹々に喧嘩を売られている』と私は理解した。

だけど、今の私には頷くことしか出来ない。
散々迷惑かけておいて、まだみんなに謝ってもないし。

お礼も言ってないし。

だからその言葉を鵜呑みにするしか今は出来ない。

「そんなこと・・・・・あるかもしれない」

だから私はいつもの小さな声で呟く。
思ったことを素直に言ったつもりなんだけど、何故だか樹々は冷たい視線を私に送っている。

今日何度も私に見せた、人を馬鹿にするような表情。

「えっ、まじで言ってる?きも」

その言葉はやはり、すぐに理解出来た。

同時に『やっぱり喧嘩を売られている』と理解した私は、樹々に襲いかかる。
そして今度は私が樹々を押し倒し樹々の上に乗る。

あと『きも』ってなんだ!

「はあ?樹々が言わせたんじゃんか!」

「いやいや、そこで納得する自分が悪いじゃん。罠だとしても『騙されるほうが悪い世の中』じゃん」

樹々は笑っていた。
私に上に乗られて動きが取れないはずなのに、無抵抗の樹々は私を馬鹿にする。

その姿はまるで『茜があたしに喧嘩で勝てるはずがない』言っているに感じたから、私の怒りは収まらない。

「絶対に許さない!」

私はそんなことを呟くが、どうやって反撃をしたらいいのか分からない。
樹々を痛め付ける良い手が浮かばない。喧嘩とかしたことないし、

いつもやられる側の人間だから、こんな時にどうやって樹々に反撃したらいいのか分からない。
首でも絞めてみようか?

でもそうやって迷っていたら、樹々はまた優しく私に言葉をかけてくれる。
人を馬鹿にするような笑顔から一転。

優しい親友の若槻樹々の笑顔に変わる。