「本当に馬鹿。本当に大馬鹿だよ桑原茜は!『死にたい』と思うときに、あたしを頼らないと意味ないでしょ!親友に『助けて』って言わないと、意味ないじゃん!確かにあの時はあたしも動揺していて、あたしも茜を助けられなかったから、言える立場じゃないかもしれない。でも紗季や橙磨さん達がいるじゃん。何のために橙磨さんが『相談ならいつもでも待っている』って言ったのか分かってるの?」

樹々の言う通りだ。
確かに橙磨さんは言ってくれた。

それは小学校に乗り込む前夜の日。
赤崎祭の営業でで離れることが出来ない橙磨さんは私に言った。

『電話で相談ならいつもでも待っているから』って。

きっと、橙磨さんも私を心配してくれたのだろう。
だからこそその言葉。

『助けて』って言ったら助けてくれる関係。

それが『親友』だ。
橙磨さんはその意味をわかっての言葉なのに。

・・・・・・・。

「分かってる。って痛い!」

私は答える。
小さな声で答えるも、また樹々に頭突きをされた。

意外と樹々の頭突き、石頭だから痛いって言うか。
私のテゴもへこんじゃうって言うか・・・・・。

そして樹々は怒っていた。
今まで以上に顔がくしゃくしゃになって、眉間にシワを寄せる。

そして叫ぶ。

「分かってないくせに、分かったとか言うな!そこがアンタの悪いところだよ!ステップクリアして、初めてその言葉に納得しなよ!だからアンタは口たけの奴だとか言われているのよ!分かっているの?」

確かに樹々の言う通り、私は口だけの女。
『やる』と言いながら、結局行動しない馬鹿な女。

『理解した』と勝手に思い込んで、自分に意味のない嘘をつき続ける、

素直になれない女。

そして大嫌いな現実からすぐに目を逸らすヘタレな私。
目の前の嫌なことに、立ち向かおうとすらしない私。

無理やり言い訳を作って、動かない自分を『正当化』しようとする馬鹿な私・・・・・。

そんな私は自分をそう納得させるように小さく頷く。

同時に小さく呟く。

「分かってない・・・・です」

私の言葉が正しいのかは分からない。
だって樹々はまた私に頭突きを食らわせるのだから・・・・。

樹々の言葉に頷いても、否定しても、私をいじめるように攻撃してくるのだから。

というかなんで?
意味が分からない・・・・・。

「痛った!なんでまた頭突き?」

「ムカついたから」

「えっ?超理不尽なんだけど・・・・」

混乱する私だったけど、突然樹々に腕を引っ張られた。
そして視界は綺麗な夜空から仲間がいる場所へ戻される。

樹々に立たされ、辛そうな表情で私を見つめる樹々の姿がそこにある。