私がその愛藍の言葉に納得したら、本当に全てが終わる。
だけどまだ私の心が晴れないのが本音だ。

散々迷惑かけて、まだ迷惑かける自分がいる。

でも、そんな馬鹿な私に、光を差し出してくれる人がいる。
桑原茜という闇を照らしてくれる月のように、大好きな親友の声が遠くから聞こえる。

「素直じゃないよね茜は。散らかすだけ散らかして、後片付けしない子供みたい。ワガママな子って言うか」

その声の持ち主は私の目の前に現れた。
彼女のチャームポイントである茶髪の髪を揺らしながら、不満げな表情で私を見ている。

「えっ?樹々?」

私はまたまた驚いた。
今度は樹々が現れたことに。

私が置いて逃げたスーパーの袋を持って、樹々は心配そうな表情で私を見つめていた。

そしてその隣には、葵の妹の花菜の姿があった。
小さく笑うように笑顔を見せる彼女もまた、大きめのスーパーの袋をぶら下げていた。

樹々は続ける。
私に怒ってくる・・・・・。

「って言うか、茜はどうしてあたし達の事を信じてくれないの?『力を貸して欲しい』って茜は言ったじゃん。それでその反応?それだとマジで腹が立つんだけど」

樹々が怒っていると理解した私は、彼女から目を逸らすとすぐに謝った。

「ごめんなさい」

「謝らなくていい。『それが桑原茜と言うワガママな女の子だ』って思えば納得する。でもあたし達、親友じゃん!なんでいつもあたし達に遠慮してるのさ?最近茜は素直になったけど、まだまだ全然足りない。心の声が全く聞こえない」

そう言った樹々はスーパーの袋を地面に置く。
そして心配そうな表情で、私の両肩掴んで小さく揺すった。

本気で私と向き合ってくれる・・・・。

でもその樹々の姿が私を不安にさせる。

心配してくれているけど、やっぱり怒っているから私は不安になる。

何より樹々に怒られたことなんて無いし・・・・・。

「ねぇ、どうして?やっぱりあたし達のことが嫌いなの?教えてよ」

「嫌いじゃない」

「じゃあなんで!」

樹々は大きく私の肩を揺すった。同時に視線も強く感じる。
心の底から親友を心配するように、彼女は目で私を訴える。

私を救おうとしてくれる。

樹々の『桑原茜』への想いは、すごく大きいものだと私もか分かっているはずだ。
私を守るために愛藍に立ち向かい、黒沼の言葉に許せずまた私を守ってくれた。

でもその結果、樹々は自分の内定を取り消しの事態に発展しまった。
私には笑顔と強気の表情を見せてくれる樹々だけど、心はすごく辛いはず。

だけどそれでも尚、樹々は私の味方になってくれる。
バカな私の考えを正そうと本気で、全力で私と向き合ってくれる。

樹々が私を想う気落ちは、桁違いなほど大き過ぎる。

だから私は樹々のその力強い視線に答えるように、思った通りの言葉を返す。
不器用な桑原茜の本音を答える・・・・。

初めて親友に自分の想いを伝える・・・・・。