「それに、当時は色んな動物を買っていたんだ。確かウサギにインコに猫に鯉にその他色々。そうなったらウサギの寿命だって分からなくなるよ。『飼育委員の先生も毎年変わっていく』って桃花が言っていたし。まあ、なんでそんなに移動が激しいのかは僕にも全く理解できないけど」

つまり、学校側は単に『ウサギが老衰死』だと知らなかったってことだ。

理由としては、『ウサギは長生きをしている』って誰一人と知らなかったから。
飼育委員の先生や教頭先生や校長先生も含めて、先生達の移動が激しかったから。

本当に誰一人と知らなかったんだろう。
その川島桃花という生徒以外は、校内では誰も知らなかったんだろう。

でもまた疑問が生まれる。
川島桃花さんのこともそうだけど、どうして彼女がこの日記を残せたのか分からない。

当時五年生の私達。
橙磨の双子の妹で、二つ年上の中学生一年生の川島桃花さんがどうしてウサギの死のことを知っているのか、イマイチ分からない。

彼女が通っていた中学校は分からないけど、小学校付近に中学校は無いし。

だから、私は橙磨さんに問い掛ける。

「えっと、川島桃花さんって・・・・・」

曖昧な私のその言葉を待っていたかのように、橙磨さんの表情が歪んだ。
妹のことになるといつも辛い表情を見せる橙磨さんだけど、今は違う。

優しく私に笑顔を見せてくれる。

「そう。僕の妹。さっき話した僕の妹。それに『なんで二年も先輩の桃花がウサギのことを知っているだ?』って不思議がっているね。『当時中学一年生だった桃花の日記が小学校に残されていたのか?』って顔をしているね」

また言い当てられて、私は小さく頷くだけ。

と言うか私、そんな分かりやすい表情しているのかな?
さっきから思考を覗かれてばっかだし。

なんだか悔しい・・・・。

橙磨さんは答える。

「そのウサギ、実は桃花が拾ったんだ。最初は僕の家で飼っていたけど、親がある日『捨ててこい』って言ってさ。でも『元々捨てられたのに、捨てるのもアレだから』って言って桃花は捨てなかった。そして当時僕らが通っていた小学校で飼うことになったんだ。まっ、そもそも『ウサギを拾った』って時点でまず突っ込みたい所だけどね。桃花は『拾った』って言うけど多分、野良のウサギを捕まえたんだと思う。猫じゃないんだからさ」

橙磨さんは一つ間を置くと続ける。

「そして桃花も小学校を卒業した。けど元々アイツが飼ってきたってこともあって、桃花は小学校を卒業してもウサギの世話をしていたんだ。だからこそあの日記。当時中学生の桃花が小学校でウサギの死に知っていたのは、そういう理由だよ。まっ、僕はウサギに触れたことがないから、ウサギのことは何にも知らないんだけどね。小緑ちゃんに呼ばれて、僕も今知ったんだ。嘘じゃないよ。『親に捨てて来い』って言われた時は、『桃花がウサギを捨てた』とばっかり思っていたし。まさか、小学校でこっそり買っているなんてね。僕も驚いた」

ということは、小学校にウサギがいた理由は『当時の生徒だった川島桃花が学校で飼い始めた』から。
彼女が『拾った』と言っているウサギのせいで、私達の関係が壊れてしまった。

だからその原因は、川島兄妹のせいだ。
そう理解した私は、無意識に橙磨さんに冷たい視線を送っていた。

さっきから妹の事をずっと語っているが、『二人で一人』と言っていた橙磨さんだ。

どうせ橙磨さんもウサギに関わってきたのだろう。
『嘘じゃない』って言っても、今さらその言葉は信用出来ない。

それに『犯人はよく事件を語る』って聞いたことがあるし・・。

そんな事を思っていたら、橙磨さんに睨まれた・・・・。