「自分が調べるって言い出して?みんなに頼って、その答え?」

紗季の言葉に私は再び二人から目を逸らす。
その通りで言葉を失う。

これも昔の私だ。
都合が悪くなると相手から視線を逸らす癖、全然治っていない。

結局、私は何も変わっていない・・・・・。

・・・・・。

私は情けなく唇を噛み締めると同時に、反論する言葉を考える。

でも今の私には何も言葉が浮かばない。
情けない言葉が見つからない。

抵抗する力すら、もう私には残されていない。

そんな私を笑うように、私を馬鹿にするような声が聞こえる。
お互い何度も助け合った、勇者みたいな正義感の強い女の子が私を批難する。

「相変わらず『無能』ですね、茜さんは。そして相変わらず馬鹿みたいな考え」

いつの間にか、私の目の前には小緑が立っている。
『可哀想な子』だと言っているような哀れな表情で、背の低い小緑は私を見上げている。

って・・・・・小緑?

「えっ?小緑?どうしてここに?」

私同様に、小緑の姿に驚く葵の姿が隣にある。
まるで『何処に行っていたんだ?』と言っているような、困った表情にも見える。

一方の小緑は、私に一冊の本を差し出す。

「はい、無能な茜さんにプレゼントです」

「プレゼント?」

小緑に変わった本を手渡された。
『みんな生きている』と書かれた、見覚えのある謎の本。

どこかで見たことのある本。
しかもその記憶はまだ新しい。

「これって」

そうだ。
今ではすっかり忘れていたけど、昨日の小学校の図書室で、私が手にしようとした本だ。

その本を取ろうとして、本の雪崩が私を襲った。

同時に当時の紗季の姿が出てきたから、その時の私は何の本を取ろうとしたのかすら忘れていた。

その本を小緑は捲っていく。
でも辺りは暗闇で何も見えなかったから、小緑は自分の携帯電話のライト機能を使ってページを照らしてくれる。

そして小緑が見せてくれる本は、誰かが書いた『日記』だと私は気が付いた。
あまり綺麗な字ではないけど、ウサギや当時飼っていた動物達の『成長記録』が書かれていた。

写真も付いたお洒落な冊子だ。
多分当時の生徒が作ったものなんだろう。

その冊子のあるページの一文に小緑は指すと、『自分で読め』と言っているような冷たい視線で私を見つめる。
私は仕方なくその一文に目を通してみると、そこはこう書かれてあった。

見覚えのある名前と共に、メッセージが残されている。