「葵、この花って『ナズナ』で間違いないよな?」

葵は花を確認するとすぐに答える。
葵の実家は花屋を営んでいるから、彼にとってはそれくらい常識なんだろう。

「ああ。よく小学校の校庭に生えているやつ」

「それで、この花はお前がウサギに食わせた花か?」

次に愛藍が葵に突き付けたのは、七年前の映像だった。
昨日小緑が気付いた監視カメラの映像で、烏羽先生が解析してくれた映像。

そして七年前の私と葵が写る映像。
愛藍が所持するタブレットにその映像がある。

一方の私はなんでその映像が愛藍のタブレットに入っているのか理解出来ない。
だから私は無意識に呟いていた。

「どうしたの?それ」

その私の疑問を、紗季は優しく笑顔を見せて答えてくれた。

「烏羽先生が送ってくれたんだって。何度も映像と花の図鑑見比べて、とうとう花の名前を突き止めたみたい」

それが『ナズナ』って花のようだ。
茎から無数の白い花びらが咲き渡る、綺麗な花。

今も私のポケットに入っている、花菜が落とした綺麗な花の名前。

「二月から六月まで咲いて、夏になると枯れてしまうからことから『夏無・ナズナ』って言われるようになったとか。それと『ペンペン草』や『シャミセングササ』って呼ばれているみたいだ。春の七草の一つで、俺らも食えるらしい」

ナズナの概要を説明してくれた愛藍の後、紗季が続ける。
同時に樹々が盗んだ小学校の図鑑を広げて、紗季はウサギのページを指差した。

「そしてそのナズナ。樹々ちゃんの本によるとね、大丈夫な花みたいなんだ。大丈夫な花って言うのは、食べさせてもいい花。と言うことはどういうことかな?茜ちゃん」

突然振られて混乱する私。
と言うかその前に、まだ二人が目の前にいるのが信じられない。

紗季もいつの間にか病院から帰ってきているし。

「えっと、どういうこと?」

私が曖昧な表情を見せると、愛藍と紗季は細い目で私を睨み付ける。
『ここまでヒントを与えて、どうして分からないんだ?』と言われているような二人の冷たい視線が私に突き刺さる。

いや、だって本当に分からないもん。
混乱する私に、問題を投げ付けないで欲しいって言うか・・・・。

そして、結局答えられなかった私を見た愛藍と紗季は大きなため息を吐く。
まるで『これ以上話しても無駄だ』と言うような、先程同様の冷たい視線と共に私を睨み付ける。

「あー、やっぱり茜ちゃんは無能だよね。こんなにヒントあげても答えられないなんて。自分達が無実だって証明されたのに」

・・・・・・・。

・・・・・え?