「アホってなにさ!私だって死ぬほど考えたのに!」

「いや、その・・・・・。アホは言い過ぎた。だから許してくれないかな?また俺もあの頃に戻りたいって言うか」

反省しているのか、申し訳なさそうな表情の葵だったが、私は即答で答えた。

「嫌だ!」

一方の葵は肩を落とす。

「っておい!なんでこの流れで否定するんだよ!対して面白くない漫才か!」

私はアホなツッコミをする葵の手を振りほどこうとするも、やっぱり男の子には敵わない。
必死に逃げようもするも、もう逃げられない。

大切な人に捕まって、本来ならそれを望む私なのに、心は嫌がっている。

本当に葵の言う通り、言っていることが滅茶苦茶って言うか。
私が逃げる理由、それはもちろん葵が怖いから。

『一人にしないで』とか、『置いていかないで』と言って情けなく涙を見せたけど、やっぱりまだ心のどこかで『葵が怖い』と思う自分がいる。

怖いから逃げてしまう。

逃げちゃ駄目なんだけど、まだ無理って言うか。
やっぱり私が悪いから、葵に申し訳ない事をしてしまったって言うか・・・・・。

その時、近くから少し怒ったような声が聞こえた。
最近何度も聞いた、私の大好きな声が聞こえる・・・・・。

「おいこら。何やっているんだこの変態カップル。誰もいないからって、イチャイチャしてんじゃねーぞ」

そしてもう一人。
優しそうな声で私達を馬鹿にするような声が聞こえる。

こちらも小学生から何度も聞いた、私を支えてくれた優しい親友の声。

「そうそう。淫らな行為はやめてくれる?やるなら、部屋でやってくれないかな?」

私はその二人の姿を確認する。

するとそこには腕を組んで怒った表情で私を睨んでいる愛藍の姿と、苦笑いを浮かべて何やら大きそうな本を持つ紗季の姿があった。

そして二人は私達のいる方までゆっくり歩み寄る。

一方の私は突然の二人の登場に理解出来なかった。
どうしてここに二人が居るのか分からない。

でもそれは葵も同じようだ。
私同様に、突然現れた親友達に混乱する葵の姿が隣にある。

「愛藍?紗季?なんでここに?」

葵の声に愛藍が答える。

「いい情報を仕入れたから来たに決まってるだろ」

「いい情報?」

愛藍の言葉を理解出来ない私は首を傾げるだけ。
そもそも『いい情報』って何を指しているのか、私にはよく分からない。

その『いい情報』をつき出すように、愛藍はポケットから携帯電話を取り出す。
そして携帯電話に写る、ある花の写真を私達に突き付けた。

それは私達が追っていた、白い花が無数に咲く綺麗な花。
私達の七年間の鍵になる花の写真。