ルビコン

と言うの全て嘘だ。

私が言った言葉は、嘘の言葉。

いや、嘘じゃないんだけど・・・・・。
葵と一緒に居たいけど、私はまだ葵の顔を見て話せないのが現実。

私が葵の胸に飛び付いたのは、彼の顔を見たくなかったから。
また気分が悪くなりそうだったから。

だから私は葵の顔を見ずに、彼から離れる。

「じゃあ、私はこの辺で。ま、また今度・・・・・」

曖昧な表情で私はそう言うと、再び川の畔を走る。
葵と逆方向に、暗い道をまた走る。

「は?おい?」

疑問に感じた葵は、私の逃げる背中を唖然とした顔で見つめていた。
でもその現実に彼はようやく理解したのか、再び私を追いかける。

そして葵は叫ぶ。

「って、なんで逃げるんだよ!」

「嫌だ!来ないで!」

私は足を止めない。
葵と言う『青鬼』から逃げるように、私は走り続ける。

でもまたしても葵に捕まった。
腕を捕まれて、強い力で私を逃がそうとしない。

「もうちょっと話聞けよ!なんでそんなに俺の事が嫌いなんだよ!」

「嫌いじゃない。ただ、その・・・・」

「な、なんだよ!」

私は不安な表情の葵に、返す言葉を考える。
理由はあるけど、言葉にすると難しい。

だからテキトーに答えてしまった。
曖昧な答えを言ってしまった。

「私に関わると、ろくなことないから」

案の定葵は再び驚く。
『コイツ何言っているんだ?』と言っているような、人を馬鹿にした表情。

最近樹々やみんなが私によく見せる表情にそっくり。

「は?お前、さっきと言っていること滅茶苦茶だぞ!アホか!」

人を馬鹿にした表情だから、私の心の中からまるで噴火した火山のように怒りが溢れてくる。

それと表情もそうだけど、何よりその葵の言葉が許せない。
葵にそんなこと言われたのが初めてだから許せない。

いつも私を励まそうとする葵なのに、裏切られた気分になったから私の怒りが収まらない。