「一人に、しないで・・・・」

そして私は葵の胸に飛び付いて、涙を流していた。
彼の制服に涙が付きそうなほど、大声で泣き続ける。

今まで涙を見せたことの無い葵の前で、私は泣き続ける・・・・・。
この七年間、私はただただ辛かった。
樹々と紗季と言う最高の親友はいるけど、そこに『私の大切な人』はいない。

どれだけ樹々や紗季といる時間が楽しくて笑顔を見せても、心は笑っていない。

まるで『嘘の桑原茜』を無理矢理演じているようなもの。
二人に愛想尽かされないように、笑っていようなもの。

本当の私は心の底に何重にも硬い鍵をして、辛い過去と一緒に眠っている。

その鍵が今、私の目の前にある。
私が追い続けていた鍵が、目の前にいる。

大好きな江島葵が目の前にいる。

だから私は葵に抱き付く自分の腕に力を込めた。
『もう離さない』と言わんばかりに、私は大きな体の葵を抱き締める。

そして葵と一緒に、本当の私でまた人生を頑張りたいのも本音だ。
だからこそ、離したくない。

離したらもう次はないと思うし・・・。
一方の葵は自分の胸に飛び付く私の姿を見て不安な表情にに変わる。
本当に何が何だか分からない顔を浮かべている。

「一人って・・・・え?茜、おい?何で泣く?」

そんな混乱する葵に私は叫ぶ。
今度は大きな声で、葵に至近距離で叫んだ・・・。

「ずっと私、一人だった。中学時代、葵や愛藍に会いたいと思っても会えなかった。助けてと叫んでも、もう葵と愛藍は私を助けてくれなかった。だから、お願いだからもう一人にしないで・・・・・。私を置いて、どこかに行かないでよ!」

その私の言葉に、背の高い葵は驚いた表情を見せて私の姿を見下ろしている。
そして葵は私の背中を擦ってくれた。

同い年なのに、私より大きな体で小さな体の私を覆う。

彼の本音と共に、私の頭を撫でてくれる。

「そっか、そうだよな。俺達、ずっと一緒だったんもんな。なのに急に離れたら、そりゃ寂しいよな。なんでこんなことに気が付かなかったんだろう。お前も俺も、『一人は寂しい』って、なんで気が付かなかったんだろうな」

葵の優しい言葉に、また私は涙腺をやられる。
葵の前だから泣かないでいたいけど、もう無理。

今が嬉しすぎて、ずっとこのままでいたい。

ずっと葵の側にいたい。

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