川へ逃げる私を、後ろから背の高い男の子が私を追っている。
その人物に振り返りたいけど、今の私にそんな勇気はない。

逃げることしか脳裏に選択肢は残されていない。

でも私は彼に捕まった。
腕を掴まれて、動きを止められた。

そして彼は私に向かって怒ってくる。

「茜!言いたいことあるなら口に出していえよ!昔のことが原因で俺から逃げるのは分かるけどさ、俺も辛いって言うか。へこむって言うか」

確かにその通りだと思う。
人を見て吐き気がするとか、相手に凄く失礼だと思うし。

そんなの大人だったら絶対に許されない。
いや、子供でも絶対に許されない。

でも、その原因がよく分からないのが私の本音。
なんで愛藍とは普通に話せるのに葵の顔を見たら吐き気がするのか、我ながら意味が分からない。

本当に自分が理解できない。

本当にバカみたい・・・・私。

だって私、葵の事が大好きなのに。
幼い頃、葵の笑顔が見るのが大好きだったのに。

ずっと葵と一緒に居たいと思ったのに・・・・。

なのに、『その相手の顔が見れない』なんて本当にどうかしている。
大好きな人なのに嫌いな素振りを見せるなんて、本当に頭がおかしい人みたい。

そんな私は小さく呟いた。
葵の言葉に返すように、彼の心配そうな表情に答えるように私は呟く。

情けなく葵の前で涙を溢しながら、葵にしか聞こえない声で私は呟く・・・・・。

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