「それで桃花はマジで二人と喧嘩したわけ。最初は桃花が優勢だったけど、相手は喧嘩の強い愛藍くんと葵くん。すぐに桃花はやられていた。そんな馬鹿な妹を助けるために、僕が駆け付けたってワケ。自分が売った喧嘩とは言え、妹がボコホコに遣られている所は見たくなかったしね。そして今度は僕が二人をボコホコにしちゃったワケ。格闘技とかした事なかったけど、いつも桃花にプロレス技掛けられていたし。自然と喧嘩も強くなったって言うか。少しは思い出したかな？葵くんと愛藍くんが無惨に敗北する姿を怯えながら見ていた茜ちゃん」

橙磨さんの言葉を聞いて、私もその日の出来事を思い出した。

私はずっと今までの二人の喧嘩を後ろで見ていた。
全く歯が立たず、小柄な少年にボコホコにされる葵と愛藍の姿。

そして喧嘩後、二人は凄く悔しそうな表情を見せていた記憶がある。

「思い出しました。と言うかあの後、二人はスッゴく落ち込んでいたって言うか。なんでか分からないけど、全然私の話を聞いてくれなかったって言うか・・・・」

そうだ。
橙磨さんにやられた後、何故だか二人は私を無視していた。

まるで私の存在が見えていないように、二人は私の話を聞いてくれなかった事がある。

それに私は二人に絆創膏を貼ろうとしても、『あっち行け！』って怒鳴られた記憶がある。
我を忘れたように、私に怒っていた記憶がある。

「それ、どうしてだと思う？」

「どうしてって・・・・」

私は橙磨さんの問い掛けについて考える。

でも何も浮かばない。
私には分からない。

だから橙磨さんに答えを聞こうかと思ったけど・・・・・。

「まあそこは自分で考えてみてね。その答えが、今の葵くんの気持ちだから」

「え？」

葵の気持ち？

えっ、まって。
意味がわからない。

「んじゃねー。後は葵くんに想いを伝えるだけだから。頑張ってね」

「えっ？橙磨さん？」

瑞季がいるテーブルに戻ろうとする橙磨さんに声を掛けたが、突然現れた樹々よって、私の視界が遮られる。

同時に見た目の悪い料理が盛られたお皿が私の目に映った。
まるでハンバーガーみたいな一品。

「じゃしゃーん！どうよ茜！美味しそうでしょ？」

樹々の嬉しそうな表情を確認した私は、目の前の料理を再び確認する。
形の悪いハンバーガー。それ以外はない。

「なにこれ？」

「なにこれって『パンケーキバーガー』なんだけど。アンタが死ぬほど練習したパンケーキバーガー。もう一回言おうか？」

「いや、いい」

樹々の言葉で、私はここ一ヶ月の事を思い出した。
昨日と一昨日開催された『赤崎祭』のために頑張ってきた日々を思い出した。