「片翼の翼を失った鳥のような生き様だよ。『飛びたい』と思っても、もう一つの羽は機能していないし。『動け』と言っても全然聞いてくれないし。いつも二人で一人って言われてきた僕達なのに」

二人で一人か・・・・。

ふと脳裏に小緑と小緑の親友の瑠璃の表情が浮かんだ。

小緑は『一人で渡る赤信号は怖いけど、瑠璃と一緒なら怖くない』って言っていたっけ。
まあ、その言葉はちょっと違う気がするけど。

橙磨さんは続ける。

「君と葵くんも似たようなものじゃないのかな?いつも愛藍くんも一緒で、いつも『三人で一人』みたいなもんだったでしょ?どこに行ってもずっと一緒だったみたいし。それに僕達と喧嘩したときもそうだったし」

「喧嘩?」

そんなことを言われても覚えていない。
昔の出来事を振り返っても、川島橙磨と言う登場人物が出てきた記憶もない。

今では私をからかう橙磨さんに怒った記憶はあるけど、喧嘩なんてしていないし。

そうやって考えていたけど、答えが見つからなかったから私は曖昧な表現を浮かべていた。

そしてその曖昧な表現の私を見て、橙磨さんは苦笑い。

「まあ覚えてないよね。実は僕達、七年前に一度だけ会ったことがあるんだ」

七年前って、『あの頃と同じ時』ってことだろうか?
葵達と遊んでいた頃だろうか?

でも全く記憶ない・・・・。

「全然覚えてないです」

『まあそうだろうね』と言っているように橙磨さん小さく頷くと、七年前の出来事を語り始めた。

同時に大好きな妹である桃花の過去も語ってくれる・・・・。

「中一の時、とにかく桃花はやんちゃしていてさ。まるで不良漫画の主人公のように暴れる日々が続くわけよ。本当に『周囲を困らせないと生きていけない残念な奴』って言うかさ。そんなある日、目の前に大きな体格で色黒の男の子と、背の高くてイケメンな男の子と、地蔵みたいな女の子が桃花の目の前に現れるわけよ。桃花は年下とは言え、その喧嘩の強そうな二人の少年に喧嘩を売ったわけ。もちろんその喧嘩を二人は買うよね。だってその二人、愛藍くんと葵くんだから。喧嘩に餓えていた二人だったし。ね、茜ちゃん」

私は小さく頷いた。
同時に愛藍と葵は上級生や他の学校の生徒と喧嘩していた事を私は思い出す。
葵と愛藍は『喧嘩するのが好きな奴だな』って当時の私は思っていたけど、愛藍が言うには違ったみたい。

『知らない男に私を取られたくない』って、この前愛藍は顔を真っ赤にして言っていたっけ。

・・・・・本当、なんだろうか?

ってか『地蔵みたいな女の子』は余計だ。

橙磨さんは続ける。