「お疲れ。何か良いこと分かった?」
突然耳に入ってきた橙磨さんの言葉。
私は顔を上げると、橙磨さんが私の座る席の前に座っていた。
『何か僕に出来ることない?』と言っているような優しい表情。
私は答える。
「うん。色々と分かった気がする。けど『あと一歩』って言うか。あとワンピース足りないって言うか・・・・」
「悩んでるね。でもその調子でいいじゃん。ゆっくりでも確実に前に進んでいるんだったらいいじゃん。何も進展のない僕なんかよりはずっとマシだよ。僕の場合は相変わらず何も進んでいないって言うか」
「相変わらず?」
それが何を意味するかは分からなかったけど、突然降ってきた雨のように暗い表情に変わる橙磨さんを見て私は気が付いた。
いつも元気な橙磨さんが暗い表情を見せる時は、家族のことで悩んでいる時だけだし。
「桃花さん、ですか?」
「まあね。本当に相変わらずだよ。二年間もよく寝てられるよ」
私の言葉に橙磨さんは自分の表情に気が付いたのか、また優しい表情に変わる。
気を使われていると感じたのか、橙磨さんは無理矢理笑顔を作った。
そんな必要ないのに。
私自身、橙磨さんの詳しい過去のことはまだ聞いていないから、『桃花』と言う女の子の事はよく分からない。
でも二年前のある事件がきっかけで、妹の意識は戻らなくなったとか。
同時に彼も留年するきっかけになったとか。
私の知っている彼の情報はそれくらい。
だからなんて言葉を掛けたら良いのかよく分からなかった。
「そうですか・・・・」
「まあ、もう『慣れた』って言うか。この場が楽しいから、あんまり気にはならないよ
」
一つ間を置くと橙磨さんは続けた。
そして何も知らない私に、橙磨さんは自分の過去を話してくれる。
「僕もね、いじめを経験したことがあるんだ。まあ僕の場合はいじめられる側でも、いじめる側でもないけどね。『友達がいじめられていた』って言うか」
「え?」
「そのいじめの犯人、実は桃花らしいんだ。僕の大切な友達を桃花は隠れていじめていたらしい。まあ、アイツの口から聞いた訳じゃないし、『桃花が犯人』って言うのもただの推測だし」
「えっと」
背景を知らない私は、ただ橙磨さんの言葉に首をかしげるだけ。
一方的に進む橙磨さんの言葉をを整理したかったが、橙磨さんは待ってくれない。
「だから早くアイツが目を覚まして確認しないと。もし事実だとしたら、一刻も早く謝らせないといけないし。どんな理由があっても、いじめは許されないからね」
そう言った橙磨さんは私の表情を確認する。
『ついていけませんでした』と言っているような私の困った表情を見た橙磨さんは優しく笑った。
「あはは。そういえば茜ちゃんは僕の過去を知らなかったね。僕も君と一緒で、色々な事を経験しているからね。逮捕、留年、家出。あと何を経験したかな?いっぱいあり過ぎて、何から手をつけたらいいのか分からないや」
そう言った橙磨さんはまた暗い表情に戻る。
悔しそうに橙磨さんは唇を噛み締めた。
そして妹の存在について改めて語ってくれる・・・・。
突然耳に入ってきた橙磨さんの言葉。
私は顔を上げると、橙磨さんが私の座る席の前に座っていた。
『何か僕に出来ることない?』と言っているような優しい表情。
私は答える。
「うん。色々と分かった気がする。けど『あと一歩』って言うか。あとワンピース足りないって言うか・・・・」
「悩んでるね。でもその調子でいいじゃん。ゆっくりでも確実に前に進んでいるんだったらいいじゃん。何も進展のない僕なんかよりはずっとマシだよ。僕の場合は相変わらず何も進んでいないって言うか」
「相変わらず?」
それが何を意味するかは分からなかったけど、突然降ってきた雨のように暗い表情に変わる橙磨さんを見て私は気が付いた。
いつも元気な橙磨さんが暗い表情を見せる時は、家族のことで悩んでいる時だけだし。
「桃花さん、ですか?」
「まあね。本当に相変わらずだよ。二年間もよく寝てられるよ」
私の言葉に橙磨さんは自分の表情に気が付いたのか、また優しい表情に変わる。
気を使われていると感じたのか、橙磨さんは無理矢理笑顔を作った。
そんな必要ないのに。
私自身、橙磨さんの詳しい過去のことはまだ聞いていないから、『桃花』と言う女の子の事はよく分からない。
でも二年前のある事件がきっかけで、妹の意識は戻らなくなったとか。
同時に彼も留年するきっかけになったとか。
私の知っている彼の情報はそれくらい。
だからなんて言葉を掛けたら良いのかよく分からなかった。
「そうですか・・・・」
「まあ、もう『慣れた』って言うか。この場が楽しいから、あんまり気にはならないよ
」
一つ間を置くと橙磨さんは続けた。
そして何も知らない私に、橙磨さんは自分の過去を話してくれる。
「僕もね、いじめを経験したことがあるんだ。まあ僕の場合はいじめられる側でも、いじめる側でもないけどね。『友達がいじめられていた』って言うか」
「え?」
「そのいじめの犯人、実は桃花らしいんだ。僕の大切な友達を桃花は隠れていじめていたらしい。まあ、アイツの口から聞いた訳じゃないし、『桃花が犯人』って言うのもただの推測だし」
「えっと」
背景を知らない私は、ただ橙磨さんの言葉に首をかしげるだけ。
一方的に進む橙磨さんの言葉をを整理したかったが、橙磨さんは待ってくれない。
「だから早くアイツが目を覚まして確認しないと。もし事実だとしたら、一刻も早く謝らせないといけないし。どんな理由があっても、いじめは許されないからね」
そう言った橙磨さんは私の表情を確認する。
『ついていけませんでした』と言っているような私の困った表情を見た橙磨さんは優しく笑った。
「あはは。そういえば茜ちゃんは僕の過去を知らなかったね。僕も君と一緒で、色々な事を経験しているからね。逮捕、留年、家出。あと何を経験したかな?いっぱいあり過ぎて、何から手をつけたらいいのか分からないや」
そう言った橙磨さんはまた暗い表情に戻る。
悔しそうに橙磨さんは唇を噛み締めた。
そして妹の存在について改めて語ってくれる・・・・。