それから私は身内のいない中学校へ進んだ。
葵や愛藍、紗季とは違う中学校。

また一から人間関係をやり直す目的で、父と一緒に決断したが、完全に心を閉ざしてしまった私は誰とも関わることはなかった。

今もそうだけど、当時はとにかく人が怖かった本音。

裏で陰口を叩かれていると思ったら、とても誰かと仲良くなりたいなんて思わなかった。
人の顔を見ることが、本当に辛かったし。

そんな中、私の兄に勧められたのがピアノだった。
兄は私を大石ピアノ教室という教室に連れてってくれて、そこで私は春茶先生と栗原先生に出会った。

二人と出会うことで、私はピアノの楽しさに気付いた。
そして私はひたすらピアノの椅子に座って、何度も何時間も弾いていた。

だから中学生生活を振り返っても、ピアノを弾いていたという記憶しか残っていない。

高校時代も中学時代と同じだろうと思ったが、残念ながらそうはいかなかった。

入学式初日から私の理想は木っ端微塵。

松川樹々の出会い。
そして同じ小学校だった山村紗季との再会。

彼女らの存在があったからこそ、私の生活や思考は激適に変わった。
何をしても楽しく上手く行く日々に、私の心はいつの間にか二人には開いていた。

だからこそ、原因となった小学生時代の記憶なんて思い出したくなかった。
辛い過去なんて、私の記憶から消し去りたかった。

まるで天と地の差。

今が楽しい。

高校生活は何一つ不満なんてないし、大切な友達もいる。
趣味のピアノも大好き。

今の現状に何一つ不満はなかったハズなんだけど・・・・・。

・・・・・・・。

本当の私はやっぱり気が付いていたみたいだ。

まるで心の中に真っ黒なシミがあるみたいに、常に違和感を感じていた。

無理矢理誤魔化そうと私は樹々や紗季の前では笑顔で過ごしていたけど、本当の私はいつも苦しんでいる。

『葵と愛藍の二人と再会したらどうなるんだ』って、ずっと私の心は脅えていたんだ。

七年間もずっと・・・・・。