コンサートホールに響き渡る荒々しいピアノのメロディー。
まるで『俺はここにいるぜ!』とでも言うような、柴田アランの凛々しい演奏。

正直言って、彼の演奏は凄く上手だ。

コンサートホールの空気は大きく変わった。
その音色に飲み込まれた人は、もちろん少なくない。

私もその中の一人なんだから。

柴田愛藍。
彼との記憶はしっかりと覚えている。

大好きな親友だったが、今では完全に疎遠。
完全に私の過去の親友。

そうなってしまった理由はもちろんある。
私の人生が大きく変わった、小学五年生の時のとある事件が始まりだった。

私達の仲が引きちぎられた、ウサギが死んだあの日の事。
『悪いのは全てお前だ』

それが彼と葵に言われた言葉。
私の全てを否定するような、彼らの真っ直ぐな言葉。

そこに間違いはない。
間違いはないは無いからこそ、私は彼らの全てを受け入れた。

私が葵にいい加減な事を言わなかったら、そんなことにはなっていなかった。
『花を食べさせたら?』なんて私が言わなかったら、こんなことにはなっていなかったはずだ。

だから私は彼らに暴力、罵声、行動、とにかく私の全てを否定された。
『生きていても楽しくない』なんて言葉を教えてもらったのも彼からだ。

『死にたい』なんて、毎日思っていたし。

その結果、私は保健室登校に変わった。
そしてそこで紗季と出会って、私の心は少しは落ち着いた。

でも保健室登校は小学校卒業まで、それは終わることはなかった。
同時に保健室登校になってから、彼らの顔は殆ど見ていない。