「友達?えっ?」

小緑と葵の関係はダンススクールのチームメイト。
一方で紗季と葵の関係なんて聞いたことがない。

二人が友達なんて、聞いたことがない。
それに二人が会話をしている所を見たことないし。

私は『どこで知り合ったの?』と言葉を投げようとした。

だけど、どうやらその必要性はないみたいだ。

「まあいっか。もう今さらカッコつけても意味ないし」

紗季は小さな息を一つ吐くと覚悟を決めたみたい。そ
して再び私に優しい笑顔を見せると続ける。

「私と葵くん、仲良いんだよ。小学生の時よく喋っていたし。同じ『飼育委員』として、入退院や保健室登校で幽霊委員だった私に葵くんが色々と教えてくれたし」

・・・・・。

はい?

「飼育委員?えっ、ちょっと待って。それって『紗季が飼育委員だった』って意味?」

混乱する私の表情が面白かったのか、紗季は私に笑みを見せて答える。

「まあ他人に全く興味がない茜ちゃんは、知らなくて当たり前だよね。当時の隣のクラスの飼育委員って、私だったんだよ。殆んど入院とかで仕事をしていないけどね」

だとしたら、紗季の言葉が本当だとしたら、私は一つ気になることがある。

「え?じゃあもしかして『紗季がウサギ小屋に向かった』のって、飼育委員だったから?」

私の言葉に、紗季は小さく頷いた。

「うん。身体悪くて委員会もまともに行けないし、当番の曜日も分からなかったし。だから私が教室に登校した日は、当番関係なくウサギに葉っぱを与えていたって言うか」

教室に登校した日?

それってつまり・・・・。

「ちょっと待って!紗季がウサギに葉っぱを与えていたのって、あの日だけじゃなかったの?」

紗季は少し考える仕草を見ると答えた。

「そうだね。いつも同じ葉っぱをウサギに与えていたし。一応『食べさせても大丈夫な草』だと自分で調べた上で食べさせていたから大丈夫だと思ったけど・・・・。結果的に死んじゃったし。だから『結局は私がウサギを殺した』って言うか。勝手に葉っぱを食べさせていたのも、飼育委員の先生には内緒にしていたし」

・・・・・。

・・・・・ん?

「ということは紗季、どういうこと?」

「私が犯人ってこと」

「いやそうじゃなくて。食べさせても大丈夫な草だったんだよね?」

「まあ一応。確か『ノコギリソウ』だったような・・・・・」

ノコギリソウ。
聞いたことあるかも。

そう思った私は慌てて携帯電話でノコギリソウを検索する。
出てきたのは赤や白や黄色の綺麗な花。

そしてノコギリみたいなギザギザの葉っぱ。

同時に私は思い出す。